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2018 年度 実施状況報告書

高等学校公民科へのサービス・ラーニングの導入に関する理論的・実践的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K04740
研究機関筑波大学

研究代表者

唐木 清志  筑波大学, 人間系, 教授 (40273156)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードサービス・ラーニング / 高等学校 / 公民科 / 公共
研究実績の概要

3ヶ年度で実施される本研究の2年目に当たる本年度(平成30年度)は、以下の二つの研究を進めた。第一に理論研究、第二に実践研究として分け、それぞれについて概要を記すことにする。
第一の理論研究では、前年度に続きポートランド州立大学のGayle Theiman氏、それに加えて今年度は、シアトル大学のMargit McGuire氏という二人の社会科教育研究者に対して、アメリカ社会科とサービス・ラーニングの関連性について意見聴取を行った。そこで得た情報は、アメリカ社会科では基礎・基本が重視される傾向にあり、サービス・ラーニングをはじめとするCivic Engagement(市民参画)に関する授業を導入することが困難である状況を迎えているということであった。この事実は、昨年度の11-12月に参加した全米社会科協議会(National Council for the Social Studies)における様々な発表からも理解することができた。このような状況は、日本の学校教育にも少なからず当てはまることである。しかし、そのようなアメリカでもサービス・ラーニングを導入している高校はあり、その場合には、州スタンダードとの関連性を図りながら、実践が取り組まれているということであった。
そこで、第二に実践研究として、日本においては、高校公民科に導入が決定している新科目「公共」に注目することが必要だと判断した。実際には開始されていない「公共」であるが、そこに結び付けられるようなユニークな公民科の実践は行われている。そのような実践を行っている教員と連携を図り、年間指導計画を入手したり、インタビュー調査を実施することを開始した。次年度(平成31年度)はこのデータを元に、具体的な実践を観察・分析することに主眼を置いて、研究を進めるつもりである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

理論研究と実践研究を通じて、アメリカ社会科で展開されるサービス・ラーニングの理論なり実践なりを日本の公民科に導入するにあたっては、学習指導要領との関連を十分に図ることが重要であることを再確認した。そこで、改めて新科目「公共」に焦点を絞って、研究を深めていくことにした。
新科目「公共」の中には、「2内容」の「C 持続可能な社会づくりの主体となる私たち」という単元がある。この主たる学習活動は、ミニレポートの作成であるが、ここにサービス・ラーニングの導入が可能であると考えた。「公共」の最終単元であるため、そこまでに身に付けた社会的な見方・考え方、そこまでに習得してきた社会的事象に関する教育内容を活用して、生徒一人ひとりが関心のある社会的課題の解決に向けてアクションを起こす、という課題解決的な学習の成立は可能である。現実的にはミニレポートの作成が中心になることが予想されるが、先進的な授業実践に学び、それを学習指導要領に盛り込まれた教育内容と関連づけることで、高校におけるサービス・ラーニングの可能性を示すことができる。
当初の予定とはいくぶんの修正が図られることになったが、教材開発の三つの視点(「現代社会の諸課題」「社会的な見方・考え方の育成」「社会的ジレンマ」)、単元開発の三つの視点(「プロジェクト型の学習」「課題解決を目指す社会的活動」「PDCAの評価の在り方」)、そして、地域社会とのパートナーシップの二つの視点(「授業づくりへの地域住民の参加」「学校と地域の協働的な学びのネットワークの確立」)は、修正後の実践研究においても十分に保証されると考えている。

今後の研究の推進方策

最終年度の今年度(平成31年度)は、具体的な授業を観察するとともに、実践者へのインタビュー調査を行い、高校公民科におけるサービス:ラーニングの実施方法について提案をする。すでに実践協力者とは連絡を取り、準備を進めているところである。
研究を進める中で、公民科という一教科の中で完結的にサービス・ラーニングを導入することには、多くの困難が伴うことが明らかとなってきた。他教科・科目との連携を始め、特に、総合的学習や特別活動との繋がりは不可欠である。現在注目している実践のいくつかは、実際には、公民科内での取り組みを超えて、正にカリキュラム・マネジメントの産物として、サービス・ラーニングが実施されている。しかし見方を変えれば、このような統合的な取り組みこそが、本来のサービス・ラーニングの目指すところでもある。サービス・ラーニングの理念や方法を核として、高校で展開されるさまざまな学習活動を結び付ける、つまり、カリキュラムマネジメントの具現化を図るにあたり、サービス・ラーニングを有効に働かせていくことは、十分に可能であるし、意義のあることである。このことは、高校公民科の教育課程上の位置付けを明確とすることにつながるであろう。
以上の研究成果を、今年度はさまざまな学会等で発表していく予定である。単なる理論研究に留まらず、具体的な提案として学校教育現場に届く研究を行えるように努力したい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、新たな単元を開発するというよりは、現在行われている取り組みを再評価して、それをサービス・ラーニング実践として読み替えていく方が現実的だと考えるに至ったからである。つまり、単元開発にかかる費用が、当初の予定ほどには必要でなくなったということを意味する。しかし、この未使用分に関しては、今年度の調査活動として有効に活用できそうである。学会発表にかかる費用も含め、今年度は特に旅費として、予算を有効に活用するつもりである。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 新学習指導要領は教科教育学の発展にどのように寄与できるか2019

    • 著者名/発表者名
      唐木清志
    • 雑誌名

      日本教科教育学会誌

      巻: 第41巻第4号 ページ: 57-61

  • [学会発表] 新学習指導要領は教科教育学の発展にどのように寄与できるか2018

    • 著者名/発表者名
      唐木清志
    • 学会等名
      日本教科教育学会
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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