研究課題/領域番号 |
17K04741
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
蒔苗 直道 筑波大学, 人間系, 准教授 (40345939)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 戦後教育改革 / 数学教育 / 進歩主義 / 本質主義 |
研究実績の概要 |
戦中の日本の数学教育再構成運動に影響を与えた1920年代から30年代の米国の数学教育界の動向に着目して、関数概念に関する主張を調査した。数学教育再構成運動において中心的役割を担った東京高等師範学校附属中学校や広島高等師範学校附属中学校における教授要目や教材の研究を収集し、両校で研究されていた米国の数学教育とその影響を考察した。 この結果、明らかになったのは、1923年の数学諸規定全米委員会の報告書『中等学校における数学の再構成』および1934年の全米数学教師協議会の第9年報『数学における関係的思考と関数的思考』の影響であった。双方における関数概念に関する主張は、数学を重視しない進歩主義の思想に対峙したものであった。しかし、従来の計算処理や証明を中心とする本質主義を単に主張するものではなく、数学を学ぶことが思考の様式を指導するものであるという主張に基づくものであった。このため、関数を具体的な事象から取り上げる事、数学の各分野において関数関係を扱う内容がある事、関数概念の本質を思考の様式と捉える事といった主張が、戦中の日本の数学教育に関数が取り入れられた背景にあると結論づけた。 この成果は、日本数学教育学会の第8回春期研究大会において論文発表され、五種検定検定教科書から一種検定教科書へと至る教材開発や、米国の数学教科書から関数教材が再構成される経緯と合わせて検討された。この検討から、旧制中学校の微積分の導入にも特徴的な展開が見られることや1931年の教授要目改正との関連を踏まえた数学教育史上の位置づけが、研究課題として定式化された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究成果を発表、検討する国際会議ICME14(14th International Congress on Mathematical Education)が延期された。また、勤務する大学のキャンパス閉鎖や感染症拡大防止対策へ対応する業務の負担過多のため、研究への取り組みが十分には取れなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
旧制中学校の微積分の導入における特徴的な展開や1931年の教授要目改正との関連を軸に研究を深める事と、これまでの成果を今後まとめる事とする。学会誌への論文投稿や延期された国際会議での研究発表を、今後の研究の具体的な推進方策とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加する予定であった国際会議が延期になり、研究自体の推進に遅れた生じ、研究経費の使用が予定通りなされなかった。次年度、開催予定となった国際会議に参加したり、研究成果をまとめたりするために使用する。
|