研究課題/領域番号 |
17K04745
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
郡司 明子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00610651)
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研究分担者 |
刑部 育子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20306450)
茂木 一司 群馬大学, 教育学部, 教授 (30145445)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 美術教育 / アート的身体 / パフォーマンス / コミュニケーション / 感性 / 対話 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である「美術教育におけるアート的身体(試)論」を構築するため、保育現場や小学校教育現場等におけるアート活動の実践等を重ねてきた。主には、前橋市S幼稚園でのアート活動に関する調査研究、高崎市Oこども園での学生を主体とするアート実践、大学附属小学校での「幼小接続期におけるアート的思考に基づく学び」の実践及び省察等である。これらは、実践内容と考察を加え、紀要等にまとめ研究実績を残すことができた。 5月には「アート的身体」の先行研究及び実践事例に位置づく伊)レッジョ・エミリアにおけるレッジョ・ナラ(市民によるアート的な語り/パフォーマンス)を見学し、そこで得た知見をもとに「アルテ・ナラ前橋」(日本でレッジョ・ナラからインスパイアされた語り/パフォーマンスを展開する実践的コミュニティ)の開催に至った。 8月に参加した「身体×メディア」(アーティストsegni mossiによる)ワークは、「アート的身体」に関する理想的な教育モデルを見いだすことができ、今後の実践研究に多大なる示唆を得ることができた。 実践研究報告の場である「ライフ×アート展」(於:お茶の水女子大学)では、「さわってメモリーゲーム」という触覚を駆使するインクルーシブな観点から遊戯性のある作品を発表し、展覧会における対話の場にて「アート的身体」の概念を拡張するに至った。 これらの研究を通じ、アート的身体論とは、進行する子どもたちの「生の全体性」喪失に対峙し、「世界に対話的であり続けようとする志向/行為」の育成を目指すべく、感性/コミュニケーション/テキスト/思考などを活用するアートによって課題解決に向かう学び論であると言える。今後は、その学び論の特性から、身体のメディア性を活かす次代の新しい創造性学習を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学改革(共同教育学部及び教職大学院設置)における手続き等が長引き、その間の研究実施が滞り、実施計画に照らすとやや遅れている状況である。特に、基礎研究となる美術教育の観点からみる身体教育の歴史、及びその先に見いだす身体性×メディアテクノロジーに関する調査・分析が不十分であり、今後研究の全体を見通してあらためて理論の確立につなぐ必要がある。 また、これまでの研究成果をまとめて発表する予定だった3月末の学会は、新型コロナウィルスの影響で中止となり、 そこでの議論や意見交流の機会を逸したため、論文投稿など他の方法で研究の公開、検証を行いたい。 一方、本研究は「アート的身体」の基礎的研究から理論的側面を強化し、その実装に接続する基盤を確立するものであるが、これまでの研究内容の要素から「パフォーマンス」のキーワードが導き出され、身体性を重視する根源的かつ進化的な美術教育のあるべき姿を志向する契機となった。あらためて、本研究で「アート的身体」の構成要素を抽出、定義づけを行い、生成の要件を検証するなど、基礎的理論を固めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、基盤研究(C)(一般)「美術教育における「アート的身体」論を実装するパフォーマンスの実施/理論研究」を見越し、「アート的身体」に関する定義、その育成に係わる内容/方法を含め、基礎的理論(試論)を確立するものである。 最終年に際し、以下に力点を置き研究の強化を目指す。 ①美術教育における身体教育の変遷を辿る歴史研究を踏まえ、身体×メディアテクノロジーの可能性に触れ、「アート的身体」育成の方向性を示す(論文投稿)②「アート的身体」論を実装するパフォーマンスの実施/理論研究へ接続する要素を整理分析し、研究の基盤としてまとめる。 上記実現に向けて、文献調査を主としつつ研究分担者らの協力/助言に基づき研究を推進、成果を論文執筆と学会発表等で公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学改革に伴う書類作成(事務処理)等により、研究に邁進する時間の確保が難しく、海外渡航による研究調査等も限られ、計画通りに進めることが不可能であった。今年度は、本研究のまとめにあたるので、あらためて「アート的身体」の文献調査及びフォールドワーク(海外での調査等も予定)に係る支出を想定し、計画的に使用していく。なお、調査研究のデータ等をまとめる上で必要となるデスクトップPCの購入も予定している。
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