研究課題/領域番号 |
17K04745
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
郡司 明子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00610651)
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研究分担者 |
刑部 育子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20306450)
茂木 一司 群馬大学, 教育学部, 教授 (30145445)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アート / 身体 / 対話 / 食 / ウェル・ビーイング / 美術教育 |
研究実績の概要 |
コロナ禍にあり、予定していた渡航調査(レッジョ・エミリア市における身体性を重視したアート教育リサーチ等)研究が適わず、文献調査及び国内でのアートイベント開催に注力し研究活動を展開した。オンライン研究会や感染症対策に配慮しながらの対面研修会など、可能な限り「アート的身体」に関する学習/研修機会を設けることができた。 学校での実践研究は、群馬大学附属小学校における「造形遊び×身体性×ICT活用」の授業づくりに研究協力者として、横浜国立大学附属横浜小学校における「生活総合×身体性×表現」等をめぐる授業研究の指導助言者として関わり、子どもが学ぶ姿の中に「アート的身体」=世界に対話的かつ探究的であろうとする構えを見出すことができた。アーツ前橋主催のAIS(アーティストインレジデンス)ではアドバイザーの役割を担い、地域の小学校にてアーティスト5組が「キット教材」の可能性を追求するなかで、素材と多様な身体性(行為)との具体的な関係性の構築過程に携わり、今後の学校教育における「アート的身体」の可能性(ロールモデル)を捉えることができた。 大学授業「コミュニティ学習ワークショップ」では、ダンサーを講師に迎え、保育現場における遊び/学びの過程をアーティスト、幼児、学生の視点から捉えた論文執筆を通じて、コロナ禍における身体性を基軸とした学びの重要性を再確認するに至った。また、大学のオンライン授業の検証結果を「図工美術会議」で発表し、オンライン下でいかに身体感覚に訴える授業内容を展開できるのか、議論を深めることができた。 その他、食×アートに関するオンラインイベント開催や前橋市「まちのほけんしつ」(LGBTQ、不登校や引きこもりの方々の居場所づくり)でのトークイベントを通じ、地域にてアート(=生の身体技法)がウェル・ビーイングへの志向に直結する可能性を参加者と共に確認し合った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外渡航によるアート教育の調査は適わなかったが、アート的身体に関する文献調査及び実践現場における観察調査、アートイベント等を通じた対話的考察の機会を設けることができた。そのなかで美術教育における「アート的身体」の定義/位置づけ(理論)/可能性等を探り、その一端を論文及び発表等を通じて広く公開、交流を重ねている。 「アート的身体」について美術教育の専門性から考察すると同時に、広義のアート教育を展開する実装的概念として、身体、食、健康福祉(ウェル・ビーイング)、芸術、パフォーマンス(なってみる学び)、人材育成等の観点から研究的アプローチを重ねてきた。それらが学校教育と直結する地域における学び/教育/人材と結びついて、新たな展開を迎えている。そのつながりを重視して、さらなる研究の深化を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
美術教育における「アート的身体」が、学校教育を起点にしつつ、地域の学び/教育とのつながりのなかで展開可能であることが見えてきた。むしろ、学校教育の枠を超える志向が「学校」という文脈から離脱し(せざるをえず)居場所を求める学習者の多様性を包摂し、生きる技法としてのアートを通じた学びの持続可能性を共有・追究する鍵になると思われる。そこで、地域(学校教育を含む)をフィールドとする「アート的身体」を実装するパフォーマンス(なってみる学び)研究に力点を置き、今後の研究を展開していきたい。 上記研究を進めるにあたり、あらためて、考察の基盤となる美術教育における身体性(パフォーマンスアートの歴史的経緯を含む)の研究を概観し、その経緯と時代的背景等との関連をまとめ、今後の美術/アート教育において身体性を重視する方向性を探りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における研究計画変更により生じた差額である。当該助成金は、研究計画に基づき、美術教育におけるアート的身体を多角的に捉えるための学習会謝金や文献調査等の費用として充てる予定である。
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