本年度は,研究3年次として,2つの研究成果をまとめて発表した。1つは,公立幼稚園5歳児クラスの歌唱活動中に対象抽出児(女児)の歌声がどのように変化したのかを検討した。活動中の6回の歌声の変化を検討したところ,5回目で歌声が変化したことが示された。その原因として,5回目の活動前の保育者による言葉がけの影響として考察した。その言葉は,活動の流れを踏まえた幼児の気持ちに寄り添ったものであった。この研究については,環太平洋乳幼児教育学会PECERAで発表した。もう1つは,公立幼稚園5歳児クラスにおける歌唱活動中に幼児達の歌声がどのように変化したのかを実際を示すとともに,歌声の変化が生じた原因について考察した。分析対象児17人について,活動中の歌声3回分(クラス歌唱時,グループ歌唱時,クラス歌唱時)の変化を検討した。「歌った箇所」と「言葉の明瞭さ」「音高の正確さ」の3点について,1人ひとりの歌声を評定し数値化した。その結果,17人中の4人についてクラス歌唱時よりもグループ歌唱時で評定値が高かった。この結果の背景にあるものとして,グループ歌唱時に歌唱モチベーションが高まったことが考えられた。グループで発表するという方法が影響したと考えられた。この研究については,日本教科教育学会で発表した。今回の2つの研究成果は,歌唱活動の指導内容に影響を受けて歌声が変化する幼児がクラスにいることを具体的に示すものである。そして,保育者による「言葉がけ」や「活動方法」によって,幼児の「歌唱モチベーション」が高まり,その結果として歌声も変化することを示すと考えられる。
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