本研究では、読書指導のエビデンスを収集できる読書力評価を開発するために、諸外国の読書力評価を検討し、日本の小・中学校の現場に適用することを試みた。読書の認知的側面を評価するテスト、非認知的要素を評価する質問紙、読書活動場面でのルーブリック、の3点について研究を実施した。 テストについては、OECDによる15歳の生徒を対象にした国際学力調査PISAだけでなく、国際教育到達度評価学会(IEA)による小学校4年生の国際テストPIRLSについて、また、英語圏以外の国としてスペインの国立評価研究所(INEE)による小学校6年生の全国学力テストについて、デジタル・リテラシー、ジャンル、設問の枠組み、解答の方法などの検討を行ってきた。また我が国の全国レベルだけでなく県レベルの学力調査との比較研究を行うことで、より効果的なテスト開発へとつなげていく可能性が示唆された。 質問紙としては、日米の読書の実践及び読書意欲についての調査を行った。主に、現時点では小中学校教員希望者である大学生がその対象となっているが、今後小学生調査に向けて進めていく予定である。読書へのアニマシオンについても、新潟県内の小学校を対象に読書意欲に焦点をあてて質問紙調査を実施し、学会発表を行った。読書へのアニマシオンという読書指導の方法が、読書意欲のどのような点について効果があったと児童が実感しているかを見出すことができた。 ルーブリックについては、アメリカにおけるIn2Booksを参考に、小学校児童と大学生で5ジャンルの本の読書交流を行い、交流でやりとりした手紙をルーブリックで評価することを試みた。In2Booksのルーブリックは小学校2年生から5年生までを幅広く大まかに評価するものだが、それを実際に用いて5ジャンルの特徴を活かして評価するためには、何をどのように細かく設定すべきかを明らかにすることができた。
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