研究課題/領域番号 |
17K04759
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
折川 司 金沢大学, 学校教育系, 教授 (90401877)
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研究分担者 |
滝浪 常雄 名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 教授 (40516986)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学校読書 / 日露比較 / 読書の質 |
研究実績の概要 |
初年次である平成29年度は,次の2点に取り組んだ。 (1)日露の中学生の読書実態と学校読書環境に関する実態の調査,及び(2)読書の質を向上させる要素・用件と中学校各段階に求められる質的水準の明確化である。 (1)の,読書と読書環境に関する実態については,モスクワで教壇に立っている中等教育教員や学校司書,教科書編集者へのグループインタビュー及びモスクワの学校訪問において得た情報をもとに,まずは日本の国立大学附属中学校の実態と比較した。日本とロシアの前期中等教育では,授業における文学的文章へのアプローチとしては類似したものを持ちつつも,学校教育における文学作品の位置づけに差異が見られた。ロシアの学校教育では,文学(特に19世紀から20世紀の)作品が,子どもたちの精神や世界観,信念や哲学的な側面の成長を促す存在として考えられていること,そうした考え方が教師だけではなく生徒や保護者を含めた社会全体に浸透していることを確認した。子どもたちを中心として読書離れが加速していることに対する危機意識は両国で共通しているものの,ロシアの文学教育が,演劇や朗読など,学校教育における他の芸術的活動と深い関係にあり,その相互作用の中で未だ豊かに実践されていることも明らかになった。 (1)の成果を受けて,充実した読書を成立させるために必要なものとして(2)中学生の読書の質を向上充実させるために必要な要素・要件,要求水準を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は中学生の読書の質を向上充実させるために必要な要素・要件,要求水準を明らかにするところまでが目標であったが,至らなかった。グループインタビューの翻訳とその内容の検討に時間がかかり,国内調査もふまえて「質的に充実した状態にある中学生読者」像を想定するための協議を十分にできなかったことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画からの遅れを取り戻すために,何よりも,平成29年度のグループインタビューにおいて把握した内容をふまえて,中学生の読書の質を向上させるために必要な要素・要件,要求水準を早急に確定する。そして,確定した要素・要件,要求水準をふまえた学校読書環境モデルを開発・試行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度のロシア渡航に共同研究者が同行できなかったことと,国内への調査が予定通り実施できなかったことが主な理由である。共同研究者には平成30年度のロシアへの調査に同行を求め,平成29年度の調査内容の補強にあたらせる。また,平成30年度は,平成29年度に実施できなかった国内調査を追加で計画している。
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