研究課題/領域番号 |
17K04759
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
折川 司 金沢大学, 学校教育系, 教授 (90401877)
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研究分担者 |
滝浪 常雄 名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 教授 (40516986)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学校読書 / 日露比較 / 読書の質 / 中学校 |
研究実績の概要 |
3年次である令和元年度は,(1)読書の質を向上させる要素・用件と中学校段階に求められる質的水準の明確化,(2)中学校読書の質的充実を保証する学校読書環境モデルの開発の2点に取り組んだ。これらは平成29年度及び平成30年度の研究においても明らかにしてきていたが,さらに確かなものにするために平成31年度においても継続した。 平成29年度及び平成30年度の研究成果である「読書冊数の増加や不読率の改善を目指して読書の量的な側面を強化してきたことによって,日本の中学生が比較的ライトな文芸書に傾きつつある実態や国語科の読解学習の経験と意図的に日常読書を切り離して捉えようとしている実態」を踏まえ,令和元年度の研究においては,中学生の読書の質を向上・維持していくためには,読書に誘う環境整備や読書量重視の取り組みに軸足を置いた読書教育では十分ではなく,学校教育における国語科の読むこと領域の学習指導の在り方,特にその中で生徒たちに示され,生徒たちが向き合うことになる問いや課題の質が読書環境の基盤として重要であることをロシアと日本の文学教育の比較,ロシアにおける読書環境や読書意識に関する調査を行う中で明らかにした。 研究の成果は,「令和元年度東日本地区国語問題研究協議会」(文化庁)において発表するとともに,論文「読書の量と質を保障するロシアの文学教育」にまとめ,文部科学省初等中等教育局や石川県教育委員会等に配付した。また,石川県内で行われた教員研修会,静岡県や石川県の教員免許更新講習等においても成果を提供してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中学生読書の質的な向上を目指す上で,読書環境として,国語科の読むこと領域の学習指導,特にそこで提示される問いや課題の質が重要であることを明らかにすることができたことから,おおむね順調であると判断した。しかし,日本の読むことの指導に適した具体的な問いや課題の様相についてはまだ不明瞭な点があり,教育現場へ提供する上で十分とはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,中学生の読書の質を保障するために,読むことの学習指導の中で示される問いや課題の具体的な内容について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
学習指導要領の全面改定と時期的に重なり,それに関連する業務の増加から,2019年度の研究に十分に取り組むことができなかった。特に,年度末に予定していたモスクワ訪問(成果報告)を実施できなかったことは大きい。また,研究分担者がロシアの不安定な情勢にセンシティブになり,渡航調査が叶わなかった事情もある。 しかし,本研究において問いや課題の質が重要であるという成果は,次研究「文学的文章の読解において中学生の分析的思考を引き出す多様な『問い』の開発」(基盤研究(C))に繋がるものであり,次研究の中でも予定されているロシアへの訪問調査やロシア教員の招聘において使用していく予定である。
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