最終年度の本年度は,多文化共生に資するコンピテンシー育成に向けて身体表現活動を効果的に実施していくための授業デザインについて検討した。このために,スペインの初等音楽科における,活動内容・評価・コンピテンシーを一体化させた授業デザインに着目し,スペイン人研究者招聘時の講演会における身体表現活動の事例を取り上げた。19の各事例について,スペインの初等音楽科の「動きとダンス」領域のスタンダードを確認するとともに,身体表現活動によって育まれる「社会性・市民性」および「文化的認識・文化的表現」のコンピテンシーの要素について明らかにした。続いて,スペインの公立小学校教員が作成した音楽科年間指導計画書の分析を通して,「社会性・市民性」および「文化的認識・文化的表現」のコンピテンシー育成に関連した身体表現活動の内容を分類・整理した。こうした授業デザインにおいては,活動内容と共にコンピテンシーの具体的な要素に着目することができることを確認した。さらに,授業時の活動がどのような能力につながっていくのかを明確化しながら,活動内容を焦点化するためにも有効であると考えられる。 身体表現教材については,スペイン人研究者の作成したDVD教材の分析を通して,世界の多様な身体表現の体験および他者との協働の方法について整理した。また,身体の動きを伴った音楽的な表現づくりにおける学びについて,教員養成系大学の授業実践を検討した。その結果,受講生は,他者を楽しませることができるような表現発表にしたいとの意欲を高め,様々なアイディアを出し合い,協働して取り組むことができた。こうした中で,音楽への新たな見方や自らの表現の広がりについて認識している姿を確認することができた。 こうした研究成果については,国内の学会全国大会にて口頭発表およびポスター発表を行った。これらを論文としてまとめ,2本が掲載された。
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