研究課題
本年度は,証明をツールとした数学的探究を実現するための累積的な授業のデザインに関して,以下二点の成果を得た。●授業デザインのための原理・原則(暫定版)の吟味これまで改良を加えつつ得ている授業デザインのための五つの原理・原則,(1)状況を厳密な表現を用いずに表し,証明を基に状況を明確にしたり,新たな状況を生み出したりすることができる余地がある課題を用いること,(2)探究者自身が素朴な証明を構成する機会を設定すること,(3)その素朴な証明の構成要素を教師の導きの下で生徒が顕在化する機会を設定すること,(4)証明する動機・目的に照らして証明を評価・改善する機会を初期から設定すること,(5)事柄と証明の関係,あるいは証明の役割についての探究者の認識を深めること,についてこれまで実施した授業データに基づき吟味した。結果,領域「数と式」においては原理・原則(3)での構成要素の捉え方が曖昧であることが判明した。この証明の構成要素に対する特徴付けについては今後検討する。●累積的な授業(暫定版)の考案証明をツールとした数学的探究を実現するため,「図形」について中学校第1学年での単元,授業ごとの学習指導の重点を吟味し直すとともに,それらを踏まえた第2学年の単元,授業ごとの学習指導の重点を明確にした。とりわけ,領域「数と式」において文字を用いた式による説明の学習指導内容を具体化した。
4: 遅れている
研究協力者の人事異動に伴い,授業の実施・データの収集の計画を見直す必要が生じた。結果,当初計画から授業の実施・データの収集を1年延ばして実施することとした。一方,これまでの研究成果を精査する期間を十分確保できたことにより,授業実施に向けての準備をより精緻にすることができた。そこで,期間を延長し,補助事業の目的をより精緻に達成することにした。
引き続き,中学校数学科の二領域「数と式」,「図形」における証明をツールとした数学的探究を実現するための累積的な授業のデザイン(暫定版)を行う。また,これらの授業デザインに基づき授業を実施し,ビデオ記録や記述物の複写等のデータ収集及びデータの質的な分析を通して,授業デザインの改善点を特定する。さらに,意図した活動をよりよく実現するために,授業デザイン改善の一環として,授業デザインのための原理・原則を適宜修正する。
(理由)主として,国外学会への参加を通して研究成果の発表,研究情報を予定していたが,校務との日程があわずに断念せざるを得なかったため,次年度使用額が生じることとなった。(使用計画)日本の学習環境等に特化した情報収集を充実するために,国内学会への参加旅費に使用する。その際,授業を実施していただく研究協力者の教諭を含めて対面による情報収集・意見交換を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Frontiers in Education
巻: 4:63 ページ: -
10.3389/feduc.2019.00063
日本数学教育学会 第7回春期研究大会論文集
巻: - ページ: 187-194
巻: 4:31 ページ: -
10.3389/feduc.2019.00031