本年度は,証明をツールとした数学的探究を実現するための累積的な授業のデザインに関して,以下の成果を得た。 ●授業デザインに基づく授業実施およびデータの分析 証明をツールとした数学的探究を実現するため,動的幾何環境下における中学校第2学年での小単元「図形の調べ方」および「図形の性質と証明」について,授業ごとの学習指導の重点を含めて小単元を再構成し,コロナ禍における制約を受けつつも学習指導を具体化した。「図形の調べ方」では意図していた,推測するために極端に特別な場合について調べること,推測したことをある一つの図に対して厳密ではないものの既習の図形の性質を根拠に演繹的に考えること,その厳密ではないものの既習の図形の性質を根拠に演繹的に考えれば極端に特別な場合も含めその他の図の場合についても説明できそうであること,をそれぞれ確認することができた。これを受けて「図形の性質と証明」の冒頭では,教師の導きの下で,説明において図形の頂点に記号を付すこととともに,図形の性質を三角形の合同に着目して演繹的に考えること,見た目が若干異なる図を一つの図で代表させるというアイディア,それぞれの有用性を生徒は実感することとなった。その結果,ある図を伴って述べられた事柄に対して,構成した証明が成り立つか否かという検討に留まらず,構成した証明が成り立つ図は何かという検討が促され,事柄と証明の関係,あるいは証明の役割についての生徒の認識を深めた。
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