本研究は,日本の法化社会の進展を踏まえ,市民のための法教育のあり方を考える基礎的研究である。本研究は,市民に必要な公正に対する見方・考え方の形成を目指す法教育の理論と実践を多面的に分析し,日本の小・ 中学校の法教育のカリキュラムを構想するために必要な視点を提出することを目的としている。その際,アメリカの「法教育」(Law-Related Education)およびスウェーデンの社会科を先行モデルとする。 平成29年度,平成30年度で得られた知見から,令和元年度には,日本の小・中学校における市民に必要な公正に対する見方・考え方を形成するための課題を解明した。具体的には,日本の司法システム論および日本の法文化論の知見から,日本の小・中学校における法教育の授業モデルの評価を試みた。これら三カ年の研究成果をまとめ,日本の小・中学校の法教育における公正に対する見方・考え方の形成の原理を提示した。本年度の研究成果は,具体的には,以下の四つである。 1.平成29年度,平成30年度の得られた知見に基づき,小・中学校における公正に対する見方・考え方の形成を目指す法教育の授業モデルを実践し,分析結果の精緻化を図った。 2.収集した資料及び集録した授業の分析結果について,アメリカの法教育および司法教育研究の専門家に意見を求めた。同時に,資料を追加収集し,分析結果の精緻化を図った。 3.研究成果をもとに,アメリカの全米社会科評議会,日本社会科教育学会,全国社会科教育学会,日本公民教育学会の研究大会等で,広く内外に研究交流を行なった。静岡県弁護士会法教育委員会との連携を図り,小・中学校教員を対象に研究成果の普及を試みた。 4.研究成果をまとめ,法教育の意義や可能性を考察するとともに,日本における市民に必要な公正に対する見方・考え方を形成するため法教育の今後の課題を提出した。
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