音楽を聴くことによって引き起こされる身体を動かしたくなる感覚は、「グルーヴ」といわれる。グルーヴは、近年盛んに研究されている。聴覚刺激による身体感覚の喚起について研究することは、聴覚と運動の連絡メカニズムを検討することでもある。また、特定の音楽的な特徴を備えた刺激により、グルーヴが引き起こされやすいことも知られている。このことは、脳内の音響情報の処理システムが音楽をどのように処理するかと、身体感覚が結びついておりことを示唆している。これらの知見は、音楽刺激による脳情報処理を活用した、実践的な応用場面(リハビリやエクササイズなど)への基礎的な知見を提供することが期待できる。さらには、グルーヴは快感情も引き起こすことが知られており、感情面でも実践的な応用に適していると考えられる。これまで先行研究では、グルーヴをもたらす音楽的な特徴について、本研究は、このようなグルーヴについて、特に音楽的な特徴に注目して検討した。どのような音響刺激がグルーヴを引き起こすのかについて、これまでは主にリズムの側面が注目されてきた。一方で、日常聴取場面や、現実場面での応用を考慮すると、音楽の様々な要素を踏まえた上での検討が必要である。本年度は、これまでのグルーヴと音楽の関係について実験結果をまとめるとともに、アウトリーチ活動なども行った。実験結果をまとめるにあたっては、グルーヴに関する新たな理論なども取り入れつつ、グルーヴ研究における本研究成果の位置づけを捉えなおした。
|