本研究の目的は、高等学校数学科における証明指導の改善のために、「形式的証明」と「決定問題」を接続する数学的探究活動の枠組みを開発することであった。特に、2019(平成31・令和元)年度は決定問題と証明問題の接合点として本研究で着目してきた「場合分けのある証明」の数学教育的価値を明らかにするとともに、「場合分け」がいかにして決定されうるか、その際の証明するという活動がいかに機能しうるかについて論考することが目的であった。具体的には、「円周角の定理の証明」を日本の数学教育において最初に行う「場合分けをともなう証明問題」と位置づけ、この証明過程をたどりながら「円周角」や「中心角」にまつわる図形的現象の理解がなされていく様を論考した。 証明過程を捉える視点については、2018(平成30)年度に「証明の記述と図的表現」のジェネリック性(生成性)への着目について、既に研究発表しているため(渡邊・岡崎,2018など)、本年度は特に「場合分け」することの数学教育的価値の明確化とそれに関する図形的な思考水準との関連を中心に研究し、成果を学会発表をした。 本年度に実施した研究の成果は、国内学会発表とその学会論文集の発表要旨よって報告されている。今後はこの成果に関連して、「場合分けをともなう証明」が「数学的現象理解としての証明」の具体的な証明問題形式となることを考察したいと考えている。本研究では、中高を一貫する証明指導を具体的に考えるうえで基礎となる課題であると考える。 さらに、本年度は本研究事業の最終年度であったため、報告書を執筆・作成した。
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