研究課題/領域番号 |
17K04774
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
清村 百合子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50423223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 音楽科 / 教科内容 / 真正性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、音楽の真正性に着目した音楽科の教科内容の構築およびそのプログラムを開発することである。3年間の研究を通して音楽科の教科内容の体系を導出し、現場で活用可能な音楽科の学習プログラムを開発することを目指している。 第2年次では、子どもの認識に焦点を当て、子どもの姿から教科内容の体系を導出すること、音楽科授業において教科内容に対する認識を深めるための学習方法の検討、の二点を目的とした。 一点目に関してはうたづくりの授業を事例にして教科内容の体系を明らかにした。言葉を唱える中で「拍」が意識され,単なる言葉はまとまりを備えた音楽としてのうたになり、「抑揚」や「音高」「旋律」や「リズム」が生成され、パフォーマンスとしてのうたへと表現するために「声の音色」「強弱・速度」「形式」を変形させていく。これらの体系の発展を支えているのが「生活感情」であることが明らかとなった。これらの研究成果については、日本教科内容学会第5回研究大会にてポスター発表を行った。二点目に関しては、音楽科の教科内容の認識を促す学習方法として、「実験」「観察」「複数の媒体の使用」「自分たちの演奏を客観的に振り返る場」の四点が見出された。これらの研究成果については、日本学校音楽教育実践学会第23回全国大会にて自由研究発表を行った。 また第2年次では、本研究の中間成果の発信および意見交流を意図して、5月に公開シンポジウム「音楽科における教科内容とはなにかー理論的枠組みと教材研究の視点からー」を行った。シンポジウムでは音楽科の教科内容を生成の原理に基づいてとらえなおすことの意義、また体系として構築していくことの重要性が再確認された。 以上、第2年次では子どもの姿から教科内容の体系および学習方法を明らかにし、研究成果については2回の学会発表および公開シンポジウムを通して社会に発信することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年次は子どもの姿から教科内容の体系を導出するという実践研究に焦点を当てて研究を進めるという計画であった。実際には、授業の構想および実践、分析、検証を行い、その成果を学会発表としてまとめることができた。また5月に公開シンポジウムを開催したことにより、研究の中間成果を公表し、意見交流を通して今後の研究の方向性を得ることができた。このことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年計画であり、今年度は最終年次にあたる。第3年次の研究実施計画は以下の通りである。 第3年次はこれまでの二年間の研究成果を踏まえ、音楽の真正性に着目した教科内容とは一体何か、またそれに基づくプログラムはどのような内容になるのか、理論と実践研究の成果を踏まえたプログラム開発を目的とする。 本研究では理論研究を通して、音楽の真正性の鍵は「リズム」にあることを導き出した。「リズム」は自然と芸術との連続性を保証する大きな概念であることから、本研究では音楽の真正性に着目した教科内容を構築するために「リズム」を中核に位置づけた。 第3年次では子どもの音楽表現活動を通して自然のリズムがどのようにして芸術のリズムへと発展しているのか、その様相を実践的に明らかにする。そしてそれらに基づいて、音楽科の教科内容のとらえ直しを図る。またその結果に基づき、具体的な授業プログラムの開発を目指す。これらの研究成果については、現場教員にブックレットとして配布し、現場の音楽教育の変革を担う一助となるよう発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、計画当初第2年次に実施予定であった附属学校や公立学校での実践のいくつかを第3年次に見送ったことが挙げられる。そのためビデオカメラの追加および各楽器の整備については、第3年次で行う必要が出てきたため、それらの予定額を次年度に使用できるよう繰越を行なった。
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