研究課題
本研究全体の目的は,アーギュメンテーション構造という視点から,数学の単元構成と授業過程の間にある一貫性を明らかにするための分析方法を確立することである。平成29年度の主な研究活動計画は,先行研究(文献)の調査・分析と理論的枠組みの設定であった。平成29年度の主な研究成果は,1)数学教育学における証明とアーギュメンテーションに関する研究動向をレビューしたこと,2)大局的アーギュメンテーション構造と局所的アーギュメンテーション構造の双方を視点とした枠組みを用いて,数学の授業データを分析したことである。1)の成果は,2017年6月に日本数学教育学会第5回春期研究大会で発表した。また,2)の成果は,2017年7月に国際数学教育心理学会第41回年会(PME41)で発表した。先行研究のレビューでは,近年の証明研究におけるアーギュメンテーション概念への注目とその多様な捉え方をまとめた。また,授業分析では,分析の枠組みとして「トゥールミン・モデル」を援用し,一つの授業内にみられる個々のアーギュメントだけでなく,一連の授業間にみられる複数のアーギュメントの構造的な関連を明確にすることを試みた。また,本研究課題を開始する直前の平成30年3月には,ドイツ・ブレーメン大学を訪問し,数学教育学における証明とアーギュメンテーションを専門とする研究者らとセミナーを行うことができた。そのセミナーにより,本研究課題および研究活動の国際化を初年度から円滑に遂行することができたと考えている。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の研究活動及び研究成果は,研究課題に関する先行研究(文献)の調査分析と理論的枠組みの設定,さらには枠組みに基づく授業データの分析であった。これらの成果は,当初の研究計画に概ね合致するものであり,また国内外の学会等で成果発表を行っていることから,「概ね順調に進展している」と判断される。
平成30年度以降は,平成29年度の研究活動の国際化をさらに推進するために,外国人研究者の招聘による研究セミナーを計画中である。日本の数学教育研究における証明やアーギュメンテーションの文化的側面をより鮮明にし,国際的な研究コミュニティの中で研究活動の評価・改善を図る。
研究計画調書の作成時に(平成29年度内の実施を)計画していた海外の大学での研究セミナーを,本研究課題の開始前(平成29年3月)に実施することとができたことが,「次年度使用額」が生じた主な理由である。当該助成金は,平成30年度以降に海外から外国人研究者を招聘する計画があることから,そのための経費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
For the Learning of Mathematics
巻: 38(1) ページ: 26-30
Research advances in the mathematical education of pre-service elementary teachers, ICME-13 Monograph
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