本研究は、次期学習指導要領の国語科がめざす能動的な課題解決プロセスにおいて、学習者の言語運用の質を捉え、学習者に関与しつつ質を高めていく、教師の協働的・相談的な新たな評価方法を開発することが目的である。かつて我が国で学習者主体の国語科単元学習が「活動あって力つかず」として批判された経緯を踏まえれば、児童の主体的学習における評価方法を明確に検討・定位しておくことは重要である。 当該年度は、平成29年度に行った国語単元学習の評価論が内包する通時的視点からの考察結果と、平成30年度に行った「学習に還流する評価」具現化に向け学校教育現場の国語単元学習実践への長期にわたる参与観察(平成30年6月末~12月初)の分析結果とを連接させ、国語科単元学習の内包する評価の課題を克服するための教師の働きの内実を明らかにした。さらに、本研究3年間の研究成果を手がかりに、学習者主体の学習論における評価論全体の理論再構築を試みた。 実践への参与観察の分析結果と評価論構築との連接にあたっては、関連する研究者の助言を適宜受けながら質的分析法に基づき精緻に実施し、児童主体の国語科単元学習に還流する「鑑識眼」による動的な評価の特質を「学習に還流する評価」の全体像構築の中核として位置づけた。新しい評価論の主張を含めた本研究の成果と関連させて、全8章の総頁数291頁の論考としてまとめた。そこではとりわけ、鑑識眼による評価が「動的」であることの内実には、①評価活動に参画した児童との呼応関係による解釈の共有、②児童固有の学習の特色を決定づける文脈と往還する解釈、③児童のメタ状況をメタする解釈、④児童と教師の解釈の「ずれ」の存在の解釈、の4点に教師の見え方の特徴があることに言及した。
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