研究課題/領域番号 |
17K04784
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
丸山 範高 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50412325)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国語科教師 / ナラティヴ・アプローチ / 教科内容 / 教師の専門性 / 教師の学習 / 国際バカロレア |
研究実績の概要 |
本研究全体の目的は、地域教育実践あるいは国際教育実践に深く関与する高校国語科教師たちが、授業実践経験を通じて、教科書に依存した既有の教科内容観を拡張するに至る経験学習過程を解明することにある。本年度の研究成果は、1:山間部や離島にある地域と密接な関わりを持つ高校に勤務する教師、および、国際バカロレアプログラムに関わる教師、それぞれを研究協力者として確保し、授業観察と半構造的インタビュー調査を行ったこと、2:調査結果の1部を分析し学会での口頭発表の準備を整えたこと、である。本調査研究の意義は、高校の国語科「読む」領域の授業改善の方向性を具体的に示すとともに、教師の専門性の多様な発達のあり様を提示することにある。 これまでの高校国語科授業では、教科書掲載文章を教材とし、教師の解釈に生徒の理解を収斂させていく授業が多くを占めるという課題があった。しかしながら、地域と密接につながる高校教師、国際バカロレアに関わる教師たちは、教科書ではなく生徒との関わりを起点に授業を構築することで、多様な専門性向上のプロセスを経て、教科書に依存しない国語科教科内容観を確立できていた。 また、教師の専門性向上に関わる先行研究では、特定の学術的理論の影響下での教師の変容を解明したものが多く、実践経験から獲得した実践理論を意識しながら専門性を向上させている教師の事例については十分研究されてこなかった。教師の専門性向上に関わる見方を拡張するためにも、学術的理論に影響されないながらも専門性を向上させている教師の事例を検討することは意義深い。そこで、本研究は、特定の学術的理論の影響が相対的に大きい教師と、そうではない教師とでの専門性向上プロセスの諸相を比較し、その多様性について考察した。 なお、これらの研究成果の一部は、第134回全国大学国語教育学会・大阪大会(大阪教育大学:大阪府柏原市)にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、地域教育実践あるいは国際教育実践に深く関与する高校国語科教師たちを研究協力者として確保すること、そして、授業観察とインタビュー調査を実施し、個々の教師の授業実践の特徴とその背景に関わるデータを収集することであった。上半期のうちに、ほとんどの研究協力者を確保し、順次調査日程の調整を終了させることができた。下半期には、調査とデータ分析・解釈を遂行でき、その成果を学会発表へつなぐことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度における研究協力者を対象とした継続調査を実施するとともに、できるだけ多様な事例を収集できるよう、さらに別の研究協力者を確保できるよう努める。到達目標として、国語科教師の教科内容観の変容(経験に伴う拡張)について、教師間での共通性と個別性を導き出し、教師の学習発達モデルの構築につなぐ予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定していた研究調査すべてを行うことができなかったためである。本研究調査は、同時期にまとめて行うものではなく、1事例ずつ丁寧な調査を行い、その都度データを分析し、続く別の調査へつなぐものである。また、調査協力者が現職教員であるため、学校行事等との兼ね合いから、調査日時の調整が難航することもあった。以上のことから、単年度で予定していたすべての調査を終了できないこともあり得る。 (使用計画) 次年度は、本年度に調査できなかった事例を優先して、早い時期に調査を終了させる。その後、次年度に予定していた調査を効率よく進める。
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