第一に、音楽デジタル教科書ならびにDVD教材を活用した教員養成のプログラムとして定着、波及を図った。具体的には、学部の「音楽学習指導論」や大学院の「音楽表現教材開発研究」のオンラインの授業において、音楽デジタル教科書等を活用した日本の民謡の指導法について実践し、音楽デジタル教科書の操作方法についても指導した。また、教員免許状更新講習でも取り上げ、現職教育の一環として、本研究の研究成果を社会・国民に広く発信した。 第二に、新学習指導要領に基づいて作成された2020(令和2)年発行の音楽デジタル教科書を入手し、教材分析を行った後、旧学習指導要領に基づいて作成された音楽デジタル教科書と比較考察をし、特徴を明らかにした。 第三に、教科書には掲載されていない「郷土に伝わる民謡」の収集を行った。鳥取県を対象とし、新民謡も含めて収集を行った。鳥取県における野口雨情(1882-1945)作詞の新民謡として、1927(昭和2)年に発表された、中山晋平(1887-1952)作曲の《三朝小唄》を端緒とし、《若桜小唄》、《吉岡小唄》、《皆生小唄》、《米子節》、《淀江》、《鳥取》、《三朝節》、《倉吉小唄》、《米子歌謡》、《鳥取歌謡》があることを確認できた。中でも吉岡温泉の宣伝歌である、三上留吉(1897-1962)作曲の《吉岡小唄》については、1936(昭和11)年に作詩されたという作成の経緯や歌詞と音楽の特徴を解明した。その他、1936(昭和11)年、鳥取県女子師範学校が発行した『鳥取県郷土史』において、《三朝小唄》と《伯耆小唄》の譜例が掲載されていることを指摘した。特に都田鼎作詞、中山晋平作曲の《伯耆小唄》の分析を行い、1929(昭和4)年、米子市の朝日座で発表され、1930(昭和5)年、ビクターからニ三吉(1897-1976)が唄うSPレコード(51172)が発売された点を明らかにした。
|