本研究は本来、戦前期の中等学校国語教科書における古典教材の採録状況について調査を行う予定であった。しかし、調査を実際に始めてみた結果、中等学校国語教科書の教材採録状況を調査する上で必要なデータに関して、これまでの先行研究に大きな問題があることが明らかとなり、そのデータ上の問題点を整備することが、より重要な研究課題として浮かび上がってきた。この課題を解決することは、戦前期の中等学校国語科教科書に関する研究を進める上で、重要な貢献を果たすものになるはずであり、研究2年目までに多くの賛同者を得て、新たな研究体制の構築をも目指していたが、コロナウイルスの蔓延により各研究機関における調査研究に大幅な制限がかかり、データの収集が極めて困難な状況に陥ってしまった。さらに研究代表者自身に原因不明の体調不良という予測不可能な事態がふりかかり、研究の大幅な遅れを取り戻すことができなかった。今年度は、コロナ禍の隙間をぬうような形で、ようやくいくつかの研究機関の調査を行うことができ、今後に向けた一定の成果を上げることができた。具体的には、特に戦前期、多くの中等学校国語科教科書を編集した、吉田彌平について調査を進めるとともに、彼が編集にかかわった教科書の現存状況や、それらの教材採録状況などを調査し、データ化を進めることができた。本研究で得られた知見と調査結果を基盤として、新たな研究へつなげるべく、準備を進めているところである。
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