本研究の目的は,教科の固有性と共通性を視点にして,社会系教育の学力形成論を理論的・実践的に究明することにある。最終年度を一年延長して臨んだ本年度は,前年度に引き続き教育現場での実践に資する提案を行うことを主なねらいにした。本年度の成果は以下の通りである。 第一に,社会系教育の授業構成と学力形成についての考察を深めた。特に,岡山県内の小中高の意欲的な授業事例を対象にして,社会系教育の役割についてあらためて検討し,それらが社会の形成者を育成する上でどのような特質を持っているのかについて考察した。 第二に,教科の共通性を重視した学力の形成を促す授業の開発を進めた。具体的には,教科横断的で汎用的なスキルの育成を視野に入れたジェンダー学習の授業を構想した。開発した授業は社会系教科の学習の延長線上に位置づくものであり,総合的な学習の時間での実践を想定したものである。この授業は,あたりまえを疑ったり当事者として将来を考えたりするための資質・能力の育成もねらいとしている。 第三に,本研究の総合考察を行った。本研究では,教科の共通性に重点を置いた分析が中心となったが,知識・スキル・態度の育成,そしてそれを支える教科横断的な取り組みや教師の姿勢に関して一定の成果を得ることができた。ただし,学力形成を促すカリキュラムや授業のあり方についていくつかの成果は出せたものの,実践や検証にまでは至らなかった。この点に関しては今後も研究を継続していきたい。
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