研究実績の概要 |
本研究は,幼児・児童の不確定な事象に関する生活経験の実態及び確率概念の実態を,横断的・縦断的に把握するとともに,幼児・児童の確率の認知過程の考察を踏まえて,幼小接続期における確率概念の形成を意図したカリキュラムを開発することを目的とするものである。研究第4年次(最終年次)にあたる2020年度は,幼小接続期における確率概念の形成を意図したカリキュラム(形成したい確率概念の内容と学習目標の系統表,具体的な学習材及び学習指導過程)の原案を作成することを目的として、研究を遂行した。具体的には,幼児・児童(小学校低学年)を対象とした横断的・縦断的調査の考察を通して,幼小接続期において形成したい確率概念の内容として,①不確定な事象の認識(日常の事象には,確実に起きる事象,不確定な事象,不可能な事象があることを認識すること),②確実性の度合いの認識(不確定な事象には,起こりやすいことと起こりにくいことがあることを認識すること)を定めるとともに,Vinner, S.&Hershkowitz, R.による共通概念経路の検定を通して得られた確率に関する異質の問題間の認知経路に基づき,玉引きの問題(あたりやすさの判断)の学習材を開発するとともにその問題提示の順序を提案した。本研究の意義として,①幼児・児童の不確定事象に関する生活経験及び確率概念の実態が横断的・縦断的に考察されたこと,②幼児・児童の確率の認知過程(共通概念経路)が明らかになったこと,③幼児・児童の確率に関する生活経験及び認知過程に基づく具体的な学習材の有効性を,実践・検証を通して明らかにしたこと,④幼小接続期における確率概念の形成を意図したカリキュラム案を開発したことが挙げられる。
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