令和2年度は、北米の教育における俳句の可能性やその指導のあり方を探るために行ったカナダトロント大学附属小学校との共同研究(俳句プロジェクト)の成果を検討した。 そのプロジェクトは、筆者による俳句ワークショップの開催と俳句授業の実施、北米の教師による俳句授業の試行、筆者と北米の教師によるミーティングの開催といった形で行われた。教師に対するインタビューやミーティングにおける議論の分析から多くの教師に俳句及び俳句教育観の深化を確認することができた。それは、俳句は書くことを苦手とする学習者にその成就感を味わわせる教材として適している、学習者のマインドフルネスの保障につながるといったものである。さらに、北米では見かけることのない俳句を用いた授業の開発がなされた。それは、国語の授業のみならず、フランス語(第二言語)の授業、体育と国語とを融合させた授業、図書館利用と関連させた授業等、多岐にわたった。また、シェアリングの時間をいかに確保するのか、そこでどのような助言を行えばよいのかといった実践上の具体的な課題も明らかになった。我が国の伝統文化である俳句が、海外において多様な教育的効果をもたらす可能性のあることを示したことは、俳句の国際化が進む中で価値あるものと考える。この研究成果は、第139回全国大学国語教育学会2020年秋期大会(オンライン)において、「国際的俳句指導プロジェクトの展開」という題目のもとで発表した。
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