本研究の目的は、大学英語教師の授業実践録における傾向と特徴を継時的に捉え、授業に関する省察のあり方を分析し検討することにより、現職教師の学習過程を明らかにすることである。 教師は教えながら教え方を学ぶと言われている。また、英語教育研究でも近年「教師教育」に代わり、「教師の学習」への注目が集まっている。しかし大学教育における教員志望者と比較した際に、現職教師による学習過程については概ね未知の段階にある。したがって、本研究では筆者が大学英語教師として記す授業実践録の記載内容を時系列で量的・質的に分析して検討し、その傾向と特徴を明らかにする。現職教師の授業省察過程をふまえ、学習モデルを提示する本研究は、縦断的・実証的アクション・リサーチの一環にある。 本研究では、二つの大学における一般教養の英語授業と教職英語授業での実践録の半期授業の記載内容を分析対象とみなした。研究期間は、4ヵ月間の半期ならびに1年半であった。結果として、一般教養英語授業の前半では、担当する学生認知について省察する頻度が少ない傍ら、後半では授業内容と学生認知のあり方についてより詳細に考察する傾向にあることがわかった。さらに、1年半の授業省察過程においては、一般教養英語授業で指導学生に対する教師による感覚や感情が継続的に記される一方で、教職英語授業では時期を問わず指導学生の認知過程への注目がなされる特徴が捉えられた。一人の教師が一般教養英語と教職英語を併行して教授する際に、異なる認知過程を経る様相が確認された。
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