研究課題/領域番号 |
17K04806
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
牧野 由理 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80534396)
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研究分担者 |
長田 謙一 首都大学東京, システムデザイン研究科, 客員教授 (20109151)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育掛図 / 美術教育史 / 視覚メディア / 近代美術 / 東京造画館 / 塚本岩三郎 / 三重出版 / 明治期石版画 |
研究実績の概要 |
令和元年度は下記2つの視点から研究をすすめた。 (1)日本の教育掛図の発行全体像をとらえるために、東西の掛図の代表的出版社とされてよい東京造画館と、日本出版(有稲館、三重出版、日本教育図画出版と会社名称が変転する)並びに戦時中両社がそれぞれ中心となる形になって作られた掛図出版の統合組織による出版目録の全体をリスト化することができた。東京造画館については、日本初とされる独立パノラマ館である帝国パノラマ館の性格とその視覚世界の広がりが、同館のその後の展開を包含していること、並びにその後の展開の原理や力学などが、見通せるに至った。 (2)アメリカのスミソニアン博物館等で、19世紀後半から20世紀初頭の欧米の教育掛図に関連する諸資料や博物画、標本画を実見し、調査・収集を行い、それらを描いた画家の実像に迫るに至った。あわせて日本国内で教育掛図の製作に携わった印刷会社や画家についての調査をすすめ、明治から戦前にかけて教育掛図を数多く印刷出版していた東京造画館とその創業者であり画家の塚本岩三郎について論文として公表した。塚本は明治初期に工部美術学校において洋画を学び、加えて石版や銅版画の技術を獲得し、東京商標社と東京造画館という2つの会社を興した人物であったことが明らかとなった。東京造画館による教育掛図は多色石版で細部まで精密に描かれ、子どもの視覚イメージを喚起する教具として重要な位置を確立していたことが示唆された。以上、3年間の研究成果として報告書を製作した。
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