本研究の目的は、音楽構造に関わる知識の学習が音楽聴取の質に影響を及ぼすかを実験的に検証することである。具体的には、音楽構造に関わる知識(音楽理論)の学習によって、学習者の音楽聴取の質が変化するのかを、学習条件を統制した実験によって明らかにする。 本研究で想定した効果が表れるためには、ある程度の学習期間が必要になると予想されたことから、実験では半年という学習時間が設定された。また、研究者が実験協力者(以下、協力者)の学習状況をチェックする必要があり、一度に多数の協力者を対象とした実験を実施することが難しいことから、複数年にわたって実験を進めてきた。 しかしながら、2019年度末以降の実験については、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を大きく受ける結果となった。本研究の学習では、多くの協力者が研究者の所属する大学内に設置されたピアノを使用する必要がある。しかし、協力者の登校が禁止されたため、学習の内容や期間の統制が大きく崩れることになった。また、2020年度に予定していた実験についても実施が叶わなかった。 2020年度末の時点において、取得できたデータは14名分であり、残念ながら分析に足るデータ数とは言えない。研究の再延長も検討したが、2020年度末の状況から判断するに、このまま実施の機会をうかがっても、実験を再開できる見込みは低いと予想された。 以上から、苦渋の決断ではあるが、本研究を2020年度時点で一旦終了することとした。取得済みのデータ自体は完全な形で残っていることから、将来的に実験が実施できる状況になり次第、再度研究を新たにスタートさせ、取得済みのデータと合わせて、研究成果として結実できるようにしたい。
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