研究課題/領域番号 |
17K04813
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
宮本 直樹 茨城大学, 教育学部, 准教授 (20736318)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | データ解釈 / 表象 / 推論 / サイエンスプロセス・スキル / 義務教育 |
研究実績の概要 |
国内外のカリキュラムでは、データ解釈能力の育成が明示され、主要な能力として位置づけられている。また、このデータ解釈能力は、科学教育における「科学的探究能力」の一つとして重視されてきた。それにもかかわらず、関連の国内外の調査で明らかになったように、日本の児童・生徒のデータ解釈能力は十分とは言えない。そこで本研究では、義務教育段階の科学教育において主要な課題であるデータ解釈能力の育成を目的とした。特に、「推論」といった認知的なスキルを踏まえて、データ解釈能力の育成を目指した研究がないことから、認知心理学、教育心理学の学問領域からの知見を得ることとした。まず、各科学的探究スキルとデータ解釈スキルとの関連を明確にし、次に、データ解釈時の推論に関わる「表象」に着目し、「表象による推論プロセス」を解明する。さらに、どの科学的探究スキルがデータ解釈スキルに最も関連しているか、を科学的探究過程における「表象」の変容から明らかにする。そのための授業実践を行う。これらを本研究の具体的な目的とする。平成29年度は、まず、主に米国のサイエンス・プロセススキルの文献資料の分析を行い、データ解釈スキルと各科学的探究スキルの関連を読み取った。また、どのようにこれらの科学的探究スキルをデータ解釈スキルと関連させて指導しているのか、を明らかにした。次に、国内外の認知心理学や教育心理学関係の先行研究を精読し、データ解釈能力育成に関わる「表象による推論」のプロセスに関する基礎的知見を整理した。この基礎的知見を踏まえて、「データ解釈時の表象による推論プロセス」の一例を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各科学的探究スキルとデータ解釈スキルとの関連として、「問いの設定」「仮設設定」スキルとデータ解釈スキルとの関連が密であることが明らかとなった。また、データ解釈能力育成に関わる「表象による推論」のプロセスに関する基礎的知見として、先行研究における「表象変化活動内における推論過程」のモデルを参照し、さらに、「教授学習への表象構成アプローチに根拠を与える原理」を踏まえて、小学校理科「梃子の釣り合いの等式導出」に着目して、データ解釈能力を育成する認知的方略「データ解釈時の表象による推論プロセス」を提案した。
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今後の研究の推進方策 |
上述した認知的方略「梃子の釣り合いの等式導出のデータ解釈時の表象による推論プロセス」を踏まえた授業実践を行い、この認知的方略の妥当性を検証することは勿論のこと、科学的探究の文脈において、「問いの生成」時や「仮設設定」時の表象と、「データ解釈」時の表象との関連も授業実践を通して、検討する必要がある。他方で、中学校理科「オームの法則の等式導出」は、生徒にとって困難とされているため、「オームの法則の等式導出」に関しても、「データ解釈時の表象による推論プロセス」を提案することも行う。
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