研究課題
国内・外のカリキュラムでは、データ解釈能力の育成が明示され、主要な能力として位置づけられている。それにもかかわらず、関連の国内・外の調査で明らかになったように、日本の児童・生徒のデータ解釈能力は十分とは言えない。そこで本研究では、義務教育段階の科学教育において主要な課題であるデータ解釈能力の育成を目的とした。特に「表象による推論プロセス」に着目して、データ解釈能力育成を明らかにした。平成29年度で明らかとなった知見や「データ解釈時の表象による推論プロセス」の提案を踏まえて、平成30年度は、データ解釈能力育成に関わる「表象による推論」のプロセスに関して、小学校理科「梃子の釣り合いの等式導出」と中学校理科「オームの法則の等式導出」を事例に、授業実践を行い、データを収集した。令和元年度は、これらの授業実践で得られたデータを分析した。その結果、「梃子の釣り合いの等式導出」においては、「パターン解釈:(特徴の分析と選択)→イメージ図を導入したことによる、表象と言葉(釣り合い)の対応付け→イメージ図による表象の首尾一貫性、明確さ、単純さの判断→表象を通じ、梃子の釣り合いに関する首尾一貫している自分なりの解釈づくり→梃子の釣り合いと表象との対応判断(メタ表象的判断)→梃子の釣り合いの等式の導出」といった表象による推論プロセスが存在した。「オームの法則の等式導出」においては、電圧を「高さ」、電流を「ビー玉の速さ」、抵抗を「流れにくさ」とする内的な表象を生成・形成し、それらを結びつけた内的表象を踏まえて、データ解釈し、外的表象として「電圧の大きさと電流の大きさは対応する」「電圧と電流の間には比例関係がある」と、オームの法則の一部分を推論する生徒が多かった。一方で、オームの法則を数式化したデータ解釈をした生徒はいなかった。
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Bulletin of the Faculty of Education, Ibaraki University. Educational science
巻: 69 ページ: 35-41
茨城大学全学教職センター紀要,『茨城大学教育実践研究』
巻: 38 ページ: 11-23