最終年度においても、コロナ禍の影響から当初の研究計画が十分に遂行出来なかったものの、これまでの研究を踏まえ本研究に関わる学術論文を作成することが出来た。
本研究は、原始的で低位な感覚とされがちな嗅覚に注目し、嗅覚刺激が鑑賞における記憶や思考を促進するのではないかという仮説を立て、研究目的を、児童を対象とする嗅覚刺激に基づく感覚間相互作用をいかした美術鑑賞教育法の開発をめざすものだった。当初は現場の小学校の児童を対象とする教育法の適用および効果の検証を計画していたが、コロナ禍によって頓挫することとなった。その代替措置として大学生を対象とする実践に切り替えたが、その実践も部分的な遂行にとどまったことは否めない。
ただ、そのような制限の中でも、図画工作科で視覚優位の方法に比重がおかれてきた鑑賞教育において、視覚と他の感覚を複合的に働かせる教育法の開発が重要になること、とりわけ嗅覚刺激を応用することにより一定の効果や鑑賞と表現の一体的関係をふまえた鑑賞活動が重要になることが、本研究を通して示唆された。
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