研究課題/領域番号 |
17K04823
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
二澤 善紀 佛教大学, 教育学部, 講師 (60633815)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 関数 / 理解研究 / 途上概念 / 事象の認識段階 / 抽象化途上の段階 / 抽象的表現の段階 |
研究実績の概要 |
本年度は,児童生徒の関数概念の理解の様相を把握するための調査問題の作成に関わって,主に理論面の研究に取り組んだ。 当初はSfardの理論を中心に進める予定であったが,Sfardの理論以外にも複数の理解研究の分析が必要であると判断し,Skemp,van Hiele,Pirie & Kieren等の理論やそれらに基づいた先行研究の分析を行った。その結果,いずれの研究も児童生徒の数学概念の理解の過程の様相について共通した構造があることが示された。 これらの理解研究の知見から,指導目標となる一般化・抽象化された関数の概念について,「現実の世界」あるいは「数学の世界」の適切な事象を対象に指導目標の概念を理解するための途上にある概念(本研究では,途上概念と規定した)の形成を促し,次に途上概念を考察の対象にして指導目標としている関数の内容を導くような理論的枠組み(関数の指導モデル)を設定することが有効だと考え,関数の指導モデルを新たに設定した。関数の指導モデルは,「事象の認識段階」,「抽象化途上の段階」,「抽象的表現の段階」の3つの段階からなる。 次に,設定した関数の指導モデルに基づいて関数指導のあり方についての先行研究のうち,特に児童生徒の認識に基づいた横地,岡森らの研究について分析を行った。この結果,横地,岡森の示した指導内容は,(ⅰ) 事象の変化を量化して捉える,つまり事象から変量を抽出する,(ⅱ) 抽出した2つの変量を対応させる,の途上概念を基礎にしており,児童生徒にとって(ⅰ),(ⅱ)の途上概念の形成が関数理解の基盤になることが示された。これらは,関数の重要な概念であることは数学の体系性から認められることであるが,関数の指導モデルを新たに設定し,それに基づいて横地らの指導内容を分析することで,関数指導における(ⅰ),(ⅱ)に関する途上概念の形成の重要性が客観的に示されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定は,(1)児童生徒の関数概念に関わる認識・理解の様相を明らかにするための調査問題の作成と調査の実施,(2)理論面の研究を進める,である。(1)の調査問題作成にあたって,児童生徒の関数理解の様相を分析する理論的枠組みの設定が本研究において重要であると考え,(2)の理論面の研究に優先的に取り組んだ。その結果,(1)の調査問題の作成と実施は次年度に持ち越すことになった。 理論面の研究に関しては,理解研究の知見に基づき関数指導の理論的枠組み(関数の指導モデル)を新たに設定することができている。設定した関数の指導モデルは児童生徒の理解の過程を表しているとも考えられるため,この指導モデルに基づき先行研究を分析した結果,関数理解のために児童生徒が獲得しておくべき概念を特定することができた。これは,関数理解の困難要因の1つと判断している。したがって,この内容を中心にして調査問題を作成する予定で,調査問題の枠組みはできているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
理論面の研究において関数の指導モデルを設定できたことから,今後は児童生徒の関数概念に関する実態を把握し,課題点を明確にする,また課題点を打開するための教材開発と指導法の検討を行う予定である。 児童生徒の関数概念に関する実態の把握については,関数理解のための基盤として,(ⅰ) 事象の変化を量化して捉える,つまり事象から変量を抽出する,(ⅱ) 抽出した2つの変量を対応させる,に関する途上概念の形成が必要であることが得られている。したがって,小学校と中学校の児童生徒を対象に(ⅰ),(ⅱ)を中心にした調査問題の作成と調査の実施,及び分析を進める。 また,課題点として(ⅰ),(ⅱ)に関する途上概念の形成が十分でないことが考えられるため,その指導のための教材開発と指導法の検討を横地らの先行研究を参考にして行う。さらに,この途上概念を表・式・グラフに関連づけて関数概念の理解を深めるための教材開発と指導法の検討を行う。 これらの取り組みは,研究協力者(小学校教員,中学校教員,高等学校教員,大学教員)と研究協議を通して意見交換をしながら進めていく予定である。 以上の取り組みで得られた成果について,国内外の学会で発表し,他の研究者や小中高等学校の教員と議論していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] 海外の学会参加に伴う旅費等の見積もりに,変更が生じたためである。 [使用計画] 次年度の物品費等に充当する予定である。
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