最終年度においては前年度に引き続き『高等学校学習指導要領商業科編(試案)』の中でも科目「簿記会計」に焦点を当て,その内容の分析を精緻に試みた。この作業は商業科に関する学習指導要領を分析するうえで,意義が大きいものとなった。さらに,これまで収集した先行研究をレビューしながら高等学校における簿記会計関連科目の教育について,これまでいかなる問題点が提示されているのかについて整理を行った。そのうえで,高等学校における簿記会計関連科目教育の意義の探索を実施した。この探索結果は日本経営診断学会 2023年度第1回九州部会において「簿記会計関連科目の高等学校教育における意義の探索―先行研究における議論を通じて―」と題して報告した。 研究機関全体において実施した研究についてであるが,まず研究期間内において数多くの商業科教育に関連する文献を購入し,分析材料を揃えることができた。さらに,高等学校における商業科教育の諸問題について,学会や公開講座等において口頭での発表を行った。その結果,高等学校における商業科教育が抱えている問題点を広く把握することができ,さらにその問題点を外部に発表できた点は大きな成果であった。しかし,論文や書籍という形での成果を公表することができなかった点は今後の課題となった。さらに,高等学校における簿記会計関連科目教育における課題は把握したが,その解決策を示すことはできなかった。 これまでの研究において商業科教育に関する先行研究は存在するものの,とりわけ高等学校における簿記会計関連科目に関する研究は不十分であることがわかった。それゆえに,今後もこの研究課題についての研究を継続し,商業科教育における簿記会計関連科目の教育上の問題点やその解決方法をより具体的に明らかにすることで,今後の高等学校における商業科教育の発展に貢献したいと考えている。
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