研究実績の概要 |
従来の中学校国語科教科書における文法事項の説明が、いわゆる橋本文法によるものであり、これが長年にわたる国語の文法教育の基礎を作り上げていることは否定しようもないのであるが、他方、日本語学を専門とする研究者からも、これが内包する重大な問題点がかねてより指摘されてきた。本プロジェクトは、橋本文法を頭から否定することなく、問題点を認識しつつこれを改良することによって文の分析の理解を深め、さらに文章全体の理解に役立つ文法へと進化させることを目指した。 2017年度に本プロジェクトを開始して以降、同僚である研究分担者・村山太郎氏の協力を得ながら、現職の中学高等学校教員2名と、国語教育における学校国文法のありよう、論理的思考力の涵養につながる教育のあり方、とりわけ言語学の知見の文法教育への生かし方などについて、会合を重ねて理解を深め合った(於・武庫川女子大学)。 2019年度には、第27回日本機能言語学会秋期大会において、佐藤が代表して「国語教科書の「説明文」の理解―SFL諸概念の応用の試み―」と題して研究発表を行った(2019年10月20日、於・安田女子大学)。2020年度には、Proceedings of JASFL, Vol.14 において、同発表が印刷物になって公開されている (pp.53-63)。 その後、コロナ禍において研究は中断を余儀なくされたが、最終年度である2022年度には、中学高等学校生徒を対象として、言葉の仕組みと働きについての理解を深め、論理的な思考力を養成する自主学習のための学習材『ことばの学びⅠ・Ⅱ』を作成して、印刷物とした(2023年3月31日、大和出版印刷)。
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