本研究の目的は,学校において子どもに起こりうる緊急性のある傷病への対応を適切に行うことができる養護教諭を養成するために,「学校救急処置」の授業プログラムを作成することである。この目的を達成するため,以下を実施した。 まず,文献検討とシラバス調査から「学校救急処置」におけるフィジカルアセスメント,特にバイタルサイン観察の重要性が明らかとなった。そこで,バイタルサイン観察に焦点を絞り,学校での救急処置場面での活用に関するアンケート調査を行った。その結果「学校救急処置」の場面では,<養護教諭の臨床判断>が必要であることがわかり,バイタルサイン観察とともに<臨床判断>にも着目して研究を進めた。特に養護教諭養成において,「学校救急処置」場面での<養護教諭の臨床判断>の過程や能力の測定方法を検討することが必要であると考え,その測定用具の開発も併せて行った。さらに,その測定用具の信頼性・妥当性を検証し,学会および論文にて発表した。 「学校救急処置」におけるフィジカルアセスメントに関しては,養護教諭を対象としたバイタルサイン観察のアンケート調査結果を学術論文にまとめ,発表した。また,「学校救急処置」の授業プログラムの1つとして,『食物アレルギーのある子どものフィジカルアセスメントとその対応』を作成し,4大学の養護教諭養成課程学生へ授業展開した。授業の前後で<養護教諭の臨床判断能力>の測定用具を用いた調査および「学校救急処置」時のバイタルサインに関する調査も行い,学会および学術論文にて発表した。 最終年度となる令和2年度には,今までの研究成果のまとめとして,アレルギー疾患児への学校での対応に関する論文および養護教諭の「学校救急処置」におけるバイタルサイン観察に関する論文を発表するとともに,前述した『食物アレルギーのある子どものフィジカルアセスメントとその対応』の授業プログラムを完成させた。
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