本研究の目的は,本格的な気象の数値実験が設定できる中学生版インターフェースを開発し,中学生の生活している地域の大気環境を調査することで,環境教育や防災・減災教育に繋げようとすることである.そこで,インターフェース画面の製作に関しては,(株)中部電力CTIに外注をした。計算結果が発散などして止まることのないように,各種条件設定を検討し,的確な値を設定した。SDカードに収録されたアプリケーションは,「台風」,「温帯低気圧」,「積乱雲」,「寒冷前線」,「海陸風」の各気象現象を対象に開発した。これら現象は,いずれも中学校理科教科書の中に出てくる気象現象である。座学でなく,数値的に計算することで,3次元的に可視化された現象を生徒達が捉えられ,さらに,その時間変化についても学ぶことができる. 一方,名古屋大学坪木研究室で開発された数値実験モデル「CReSS」は,そもそも総観スケールの雲を再現することに特化したプログラムであることから,局地気象の現象を的確に再現するかをチェックする必要があった.そこで,愛媛県大洲市において,霧を伴った陸風「肱川あらし」の特定観測を実施し,霧の映像や気象観測を,肱川に沿い3地点で実施した。そのデータとシミュレーション結果のデータと比較したところ,その妥当性が明確になった。さらに、このシステムを公立中学校理科の授業に於いて実践し,その教育効果を調査した。教育実践の前後に、プレ・ポストテスト、事後にアンケートを行い、統計分析を行った結果は良好で、中学生にも十分授業を行うことができた。 この開発したプログラムを、「科学教育用CReSS(Web-CReSS SE-Ver.3-」と命名した。
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