研究課題/領域番号 |
17K04839
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
藤野 祐一 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (70199355)
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研究分担者 |
安藤 耕己 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (30375448)
佐川 馨 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (40400519)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カリキュラム構成・開発 / 高齢者 / 少子高齢化 / 生涯学習 / 音楽教育 / 質問紙調査 |
研究実績の概要 |
地方における少子高齢化の現状は山形の例に見るとおり取り組むべき喫緊の課題であり、少子化傾向に歯止めをかけ、地域の高齢者が健康で生き生きと過ごせる環境を整えることは、地域社会の発展のために不可欠である。本研究では<高齢者の生涯学習を支援するための音楽教育プログラムの開発>が必要であると考えた。 研究計画全体においては、①「地域の高齢者の音楽に関連する生涯学習の実態とニーズを把握」し、そこで得られた知見に基づいて②「高齢者向けの生涯音楽支援プログラムの開発と実践」に取り組む。その上で、退職教員のマンパワーを活用した③「地域の人材活用による生涯音楽学習の指導者・支援者のネットワークづくり」を行い、④「同年齢集団による<まなび>と<かかわり>の組織化」を目指す。これからの音楽教育研究において、高齢者の生涯学習に着目した音楽教育支援プログラムの開発と実践は大きな意義をもつと考える。また、地域の退職教員を活用した生涯音楽学習の指導者・支援者のネットワークづくりは、同年齢集団によるかかわりと学びを生み出し、生涯音楽学習の豊かな展開をもたらすことが期待できるであろう。本研究では、そのような意義も踏まえつつ、まずは高齢者の音楽に関する生涯学習の実態とニーズを調査する質問紙を開発し、音楽の嗜好、音楽との関り、音楽経験、音楽に対する価値観を把握するための研究の第一報とした。 これからの日本の音楽教育を考えた場合、学校で学んだ音楽学習の成果を生涯学習の場へと確実に繋げていく実践研究の積み重ねが必要と考える。音楽教育研究も、学校教育を主な対象とするものに加えて、社会教育を対象とする研究も推進していく必要があるだろう。そのため、本研究では音楽科教育の教員と実技担当教員、そして生涯学習の教員が連携協力しながら、それぞれの研究手法や成果を統合的に活用して研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は以下の四つの課題に取り組んだ。ⅰ)地域高齢者の音楽に関連する生涯学習の実態及びニーズについての質問紙調査、ⅱ)質問紙調査を実施して、そこから浮かび上がった課題の抽出と解明、ⅲ)音楽関連の生涯学習を行っている先進地域の視察、ⅳ)音楽教育プログラム開発のために、山形県出身の作曲家を中心とした唱歌作品等の資料収集。このうちⅰ)「高齢者の音楽に関する生涯学習の実態とニーズ」を把握するための質問紙の開発については以下のように行った。質問紙は、基本的属性(性別、年齢)と、①音楽の嗜好、②音楽との関わり(音楽環境、音楽活動)、③音楽経験(習い事、学校音楽)、④音楽に対する価値観の四つのカテゴリーで構成されている。これらの質問紙開発については「高齢者の音楽に関する生涯学習の実態とニーズ(1)―嗜好、関り、経験、価値観を把握するための質問紙の開発―」の研究題目で論文を作成し、「生涯音楽学習実践学会」発行の『生涯音楽学習実践学』第2号(2018年5月発行)に発表し、質問紙の開発過程を含めて具体的に記載している。本調査については、藤野が3月下旬に山形市芸術文化協会事務局を訪問してアンケートの趣旨を説明した上で協力要請をした。30年4月中旬以降に協会所属の比較的高齢者の多い団体を対象に集合調査法で500名から700名に対してアンケートを実施する計画である。 ⅲ)音楽関連の生涯学習を行っている先進地域の視察については、生涯学習という用語の発祥地であり,山形と同様の課題を抱える秋田県の諸施策について関連施設の職員から聞き取り調査を行った。成果は30年度の取り組みの中に反映させていきたい。ⅳ)山形県出身の作曲家を中心とした唱歌作品等の資料収集については,県民歌制定に関する諸資料の収集,山形県関連作曲家の作品の収集に取り組んだ。今後,高齢者の生涯学習用教材の開発に取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ⅱ)質質問紙調査及びそこから浮かび上がった課題の抽出と解明、ⅴ)山形県内の市町村による音楽関連の生涯学習施策の調査、ⅵ)地域の生涯音楽学習の指導者・支援者のネットワークづくりを行う予定である。ⅴ)では主な施策はホームページや広報誌等で公開されていることが多く、それらを事前調査し不明な点については訪問調査を行い、協力を仰ぐようにする。ⅵ)の高齢者向け生涯音楽学習支援システムを実施する指導者・支援者の存在は最も大きいものである。単に音楽的技能や知識のみを有することを条件とするのではなく、一定の教育経験があることが望ましいと思われる。そのため退職教員を中心としたネットワークづくりを行いたい。退職教員と支援される高齢者の年齢が近いことによって、支援者のシステムが円滑に働くものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度の支出予定の費目中謝金に残額が出た。これは質問紙調査における人件費等の謝金が30年度の支払いに変更したことによる。よって30年度の支出予定の謝金に残額72176円を加えて研究を進める計画である。
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