研究代表者は新学習指導要領が求める「各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら育成」する教育を道徳科において実現するため、柔軟なコンピテンシー・モデルに基づく道徳教育の方法を開発しながら道徳の内容項目全体に関する指導評価用コンピテンシー・モデルを体系化し、カリキュラム・マネジメントに資することを研究の最終目的としている。本研究では道徳科のいくつかの内容項目に関する指導評価用コンピテンシー・モデルを構築し、学校現場での授業実践、教師と研究者による事後検討、および教師による子どもの行動観察に基づいてモデルを検証、洗練し ながら柔軟なコンピテンシー・モデルに基づく道徳教育の方法を開発することを目的とする。 2019年度は、コンピテンシー・モデルの段階がスザンヌ・クック=グロイターの自我発達段階と関連していることから、コンピテンシー・モデルによって道徳性の発達段階論に見られるスタンダードに基づく評価とエピソード評価を統合した評価を行う方法について検討を行った。そのため、善悪の判断についてのコンピテンシー・モデルを作成し、学級目標の達成に向けた道徳科の単元授業を計画、実施、評価するとともに、授業者にホワイトボード・ミーティングを用いたインタビューを行い、インタビュー結果について修正型グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。さらに、単元授業の計画から実践、事後検討、次の単元授業の構想までの過程全体の考察についてはエピソード評価を用いて考察を深めた。その結果、教師の視点やスタンスを自覚した上で子どもの生き生きとした姿を柔軟なコンピテンシー・モデルと重ねて捉え、そこに見られるズレや違和感を探求し続けることでエピソード評価の妥当性や有効性を担保できる可能性を明らかにした。
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