本研究の成果は以下の通りである。高等学校(以下、高校)の道徳教育実践が全国的に最も進んでいる茨城県を研究対象にして教師・生徒の言説分析を行い、その結果に基づいて討議型道徳授業の方法と動画教材開発、さらには高校道徳の動画教材マニュアルを作成したことである。まず最初は、タブレット端末を活用した協働学習方法の実践的論究を、茨城大学の1年生の教養科目において行った。この科目では、タブレットの動画アプリを活用して現代の社会問題を取り上げた報道番組をグループによる協働活動で作成させ、プレゼンテーションさせた。さらにこうした協働活動を県立高校(A高校、B高校:両校とも進学校である)においても実施し、その教育的効果を検証した。 さらに茨城県の県立高校2年生の必修科目「道徳プラス」の動画教材の開発を行った。討議型道徳授業のモデル教材「みんなの桜の木」は、道徳プラスの授業で使用することを想定して作成したものであり、活字教材と動画教材(この教材はPowerPointを使用したフォトムービー教材で、令和元年7月27日にYou Tubeにアップロードした)を制作し、その教育的意義を検証した。両教材は、実際に県立C高校の道徳プラスの授業で使用して頂き、生徒にアンケート調査を実施し、js-STARによる直接確率計算(1×2)による量的分析を行い、その教育的有効性を確認した(一連の研究成果は日本教育メディア学会の研究会論文として掲載:令和元年7月6日Web掲載:1~6頁)。 また、この授業では質的分析として生徒たちの言説分析も行っている。具体的な分析手法としては、動画教材に対して否定的な評価を行った生徒に対して授業担当の教員によるインタビュー調査を実施した。彼らの言説の解釈的アプローチの結果では、生徒たちは動画教材に興味を示しながらも、活字教材の方が想像力を広げられる点を評価していることが分かった。
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