本研究課題は「授業者の言語能力と授業構築との関係性の解明と授業力向上プログラムの開発」であるが、本年度は昨年度までに明らかにしてきた言語能力と授業力を踏まえ、新たな課題としてICTにおける言語能力を視野に入れ、教育現場の教員との協働により研究課題を実地検証してきた。具体的には、授業力としての言語力には「構造的解釈力」「語彙イメージ力」「文脈想像力」があり、授業者のこれらの能力が、教材化研究や教材開発、そして授業構築に影響を及ぼしていることが判明した。このことは「文学的文章における構造と語彙」(教育科学国語教育)に発表した。また、研究課題の問題提起で示した「読解力と語彙力」の問題については、語彙の量と質の関係を踏まえて「わかった」という内的状態を捉え、それを学習者にも体験させるためのプログラム案を提示した(「文章読解と語彙指導の関連性」教育科学国語教育)。また、初期の研究計画にはないものの新たな課題として見出されたICTと語彙の問題について捉えるために、一年間の延長を行い、ICTを用いた国語科教育における語彙力と授業構築力の関係について、言語能力と社会的手段という観点から分析を試み、その結果を「「国語科教育の理念とハイブリッド教育の未来」(2021.4出版)に投稿した。このICTと語彙力については、今後の研究課題となる。 これらの研究的意義について、研究成果が授業者の授業力向上に資するものと考えているが、その周知手段として、教育現場の先生方の研修機会である「茨城県教育研究会」の講師として参加したり、県内の特別支援学校の「国語」の指導助言、大学附属中学校との共同研究等、現場の先生方に説明をする機会を設けた。このことにより、授業構築には語彙力の問題がかかわっていることが理解され、語彙力を踏まえた教材研究が可能になっている。
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