研究課題/領域番号 |
17K04847
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
藤井 和子 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00272881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 通級による指導 / 自立活動 / 現職研修 / 教師成長 |
研究実績の概要 |
平成30年度、実施した研究は以下の通りである。 ①昨年度実施した、通級指導教室担当教員を対象にした面接調査を対象者を増やして実施し、通級指導教室担当教員が自主的に展開している研修団体における現職研修の実態を明らかにした。経験年数を重ねた熟練の教員が、新任の通級担当教員の専門性をどのように高めようとしているのか、その一端を明らかにすることができた。調査対象となった熟練教員は、自身の経験をもとに独自の現職研修プログラムを開発し、専門性の継承に熱心に取り組んでいた。このような、新任教員を対象にした研修会を企画運営すること自体が、指導経験を積み重ねてきている通級担当教員の現職研修の機会となっていることが伺われた。本調査の結果の一部を、つくば自立活動研究会(2019年2月23日開催)の研究発表会にて、発表した。 ②平成29年度に実施した、地域の早期療育機関に対する個別の支援計画作成支援の成果の一部を日本特殊教育学会第56回大会で発表した。さらに、上越教育大学研究紀要に投稿した。早期療育機関が作成する個別の支援計画は、就学先決定に関して意見を述べる役割を担う保護者の意思決定を支え、学校(通級による指導)における教育課程編成に影響を与えるものである。つまり、保護者に対する説明責任を果たすために作成するものであることが明らかになった。就学先の学校に引継ぎを行うものの、うまく活用されていないことも明らかとなり、今後、どのように学校(通級による指導)での活用を図っていくかの検討が課題として残された。 ③全国の特別支援教育センターへの調査を実施し、実施されている現職研修カリキュラムの実態、教員養成大学の関与の実態について、現在、集計を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学における通級による指導に関わる学修の実態、教員養成研修機関において実施されてきた通級による指導に関わる現職研修の実態及び学修内容、早期療育施設における個別の支援計画作成及び引継ぎの現状、等現職研修プログラム開発に必要な情報を収集することができた。さらに、各都道府県では、今後ますます通級指導担当教員の専門性養成が求められる事態にありながらも、予算、時間の観点から現職研修に課題を抱えている実態、及びその中で実施している工夫の現状を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、通級による指導を展開している特別支援学校の知見をもとに、地域を基盤とした、特別支援教育の専門性を担保する現職研修のあり方について検討する。 これまでの調査で、通級指導担当教員研修の中に、自立活動の理念、個別の教育支援計画、個別の指導計画をキーワードとした内容が少ないことが明らかになっている。新任教員が多い中、実施される研修内容が、障害に関する知識やアセスメントの方法、指導法など基礎的な内容になりがちであり、教師間の連携による個別の指導計画作成や、自立活動の指導と各教科等の授業との関連といった、連携に関する研修が少ない。教育センターが行う研修及び個人研修のみでは、時間的にも制約がある。連携については、校外における研修よりも、勤務校を基盤とした研修方法を活用する方が学びやすい。さらに、自立活動の理念に基づいた通級による指導を展開できる力量を養成していくためには、特別支援学校が蓄積した専門性を活用し(特別支援学校のセンター機能活用)、地域を基盤として各学校が連携するという視点に基づいて、現職研修プログラムを開発していくことが必要であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実施した調査のデータ処理において、予定していた人件費を抑えることができたためである。平成31年度は、学校及び地域を基盤とした現職研修プログラム構築を行うことを目指し、通級による指導の授業実施に係る教材開発にも消耗品費を執行することを計画している。
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