研究課題/領域番号 |
17K04847
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
藤井 和子 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00272881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 通級による指導 / 自立活動 / 連携 / 教師成長 / 現職研修 |
研究実績の概要 |
令和2年度に実施した研究は、以下の通りである。 ①令和元年度末に実施した全国の特別支援学校が実施する通級による指導の実態調査についてまとめ、第58回日本特殊教育学会(2020年9月19日から9月21日)において発表した。本研究は、特別支援学校がセンター的機能として実施している小・中学校等に在籍する障害のある児童生徒に対する通級による指導の実態について調査したものである。平成5年の通級による指導制度化以降、指導の対象児童生徒数が激増する中、小・中学校の通級指導担当教師の専門性確保が課題となっている。特別支援学校の通級による指導の実態を明らかにすることによって、小・中学校の通級指導担当教師の現職研修プログラム開発に必要な知見を得ることが期待された。ホームページで通級による指導の実施が公表されている全国の特別支援学校200校に調査依頼を行い、143校から返信を得た。そのうち、76校は通級による指導を実施しておらず、実施していると回答のあった60校70名分を分析の対象とした。通級による指導に関する研修を予め受けていた教師は、5名であった。指導実施上の課題として最も多く挙げられたのは、在籍校との連携であった。センター的役割として実施している一方、「管理職からの理解がない」「予算配分がない」といった課題も挙げられた。 ②通級による指導と在籍学級における教科指導とをつなぐ個別の指導計画作成及びケース会議に関する実践研究 発達障害ある児童について、学級担任との協働による個別の指導計画作成、それに基づく教科の授業づくりを実践し、学級担任における通級児の理解及び教科の授業づくりに対する捉えの変化を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、令和元年度までに明らかにした現職研修プログラムを上越地域の通級担当教師で組織されている自主的な研究会で実践してもらうことを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、十分に実践することができなかった。 補助事業期間の延長を申請し承認していただいたので、令和3年度において、オンライン研修も計画した上で実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
自立活動の個別の指導計画は、通級による指導を受ける児童生徒の教科等の学びに対する説明責任を学校として果たしていくためのツールとなるものである。したがって、学校が作成主体となる。2019年告示学習指導要領では通級による指導において、自立活動の個別の指導計画作成が義務付けられたが、作成の目的を学校として確認することなく作成が進められている現状があると考えられる。通級担当教師が増加する現状において、現職研修の内容は、障害の改善・克服に関わる指導技能の獲得に関する研修に重点が置かれがちである。自立活動の個別の指導計画作成の意義について理解し、学校として組織的に取り組んでいくための研修も取り入れていくことが必要である。 今後は、本研究によって構築した現職研修プログラムに基づき、協働による自立活動の個別の指導計画作成が通常の学級担任教師の教科指導の専門性獲得(教科指導の専門性意識や自己研修への取り組み)に与える影響についてさらに確認していくとともに、通級担当教師自身の専門性認識や主体的な自己研修の実態に与える影響について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、予定していた学会への参加や調査が実施できなかったためである。令和3年度は、調査費、専門的知見の提供、データの処理等において、郵送費、謝金、人件費等を使用する予定である。
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