研究実績の概要 |
全国の公立中学校における職場体験の実施状況は調査を始めた平成16年度以降から増加傾向にあった。しかし, 4日間以上の職場体験を実施する中学校は平成19年度をピークに減少傾向を示していた。平成16~24年度頃の中学生は, 本研究を行った2017-2021年頃に18~20歳代の大学生や職業人となっていたことから,本研究は大学生や職業人を対象に調査を行い, 中学校時代の職場体験やキャリア教育が, 成人期の進路選択や職業生活等に与えた影響についてキャリア意思決定, 進路成熟, 地元志向等の視点から検討した。さらに,本研究では中学校の教員や事業所の方にも調査を行い, 職場体験やキャリア教育の捉え方や具体的な取り組等について多角的に現状を把握し, これからの職場体験やキャリア教育の在り方を検討した。本研究の結果,中学校における職場体験が,大学生や職業人の進路選択や職業生活,職業観等,成人期のキャリアに影響をあたえることが明らかになった。また,中学校の教員や事業所の方に調査を行い, 職場体験やキャリア教育の捉え方や具体的な取り組み等について多角的に現状を把握できたことは,今後,職場体験やキャリア教育を展開する上で多くの示唆を得ることができた。 文部科学省(2005)は,職場体験の期間について「緊張の1日目,仕事を覚える2日目,慣れる3日目,考える4日目,感動の5日目」「1日より3日、3日より5日」と,同じ活動であったとしてもその質が大きく変わってくることを示し,5日間の職場体験を推奨している。しかしながら,2020年のCovid-19の感染拡大を期に,体験そのものを控えなければならないことを余儀なくされ,学校現場ではオンラインで行う職場体験など新たなスタイルが試みられるようになった。今後は,新たな職場体験のスタイルを含めて,その効果について研究を深める必要があると考える。
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