研究課題/領域番号 |
17K04853
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
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研究分担者 |
岩男 考哲 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30578274)
伊藤 創 関西国際大学, グローバル教育推進機構, 准教授 (90644435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 母語の活用 / 教科書 / 言語習得 / 異文化交流像 / コミュニケーション能力 |
研究実績の概要 |
本研究の代表者である仲と共同研究者である岩男は、英語教科書と国語教科書において、異文化交流のあるべき姿がどのように提示されているのかを考察した(仲・岩男「中学校「国語」・「英語」教科書における「異文化間交流」像」、『社会言語学』、17号、2017年)。これにより、他者とのかかわりにおいて、目的の達成に重きが置かれ人間関係の構築にとって必ずしもプラスに作用するわけではない異文化交流像が示されていることを指摘した。 仲は、英語教育における評価活動の問題点を明らかにし、学習者の学びと振りかえり、教師が行う授業内容と評価との連携の重要性を指摘した(仲「英語科教育における評価活動の再考」、『岐阜大学教育学部研究報告(人文科学)』、2017年)。さらに仲は、授業を構成する上で、「良い授業」の成立そのものが目的化されることにより、授業が演劇化される問題点を指摘した(「授業を演劇化する「教える技術」:英語教育者は学習者とどう向き合うのか」佐藤慎司・佐伯胖『かかわることば』、東京大学出版会、2017年)。上記の研究と相まって、理想化された学習者像およびそれを構想する授業における問題点の一端が明らかとなった。 言語面に関する研究としては、岩男が国語教科書の語彙に関する調査を行った(岩男考哲・宮地弘一郎「日本の「国語」の教科書で提示される語彙に関する調査」、『2017中國文化大學日本語文學系國際學術研討會〈日本に関する教育と研究:文学・言語の多様性と多元化及び情報の分析と異文化接触〉論文集』、中国文化大学)。 共同研究者である伊藤は、性が言語学習において差異が生じるかどうかを調査した。さらに、留学生の一般的な学力と日本語の習得への影響についても考察した。これらにより、学習者の多様性と言語学習との関係性の一端が明らかとなりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は資料収集と研究の準備に時間を多く費やす予定であったが、助成金の受諾以前から取り組んできたため、予定以上に研究成果を生むことができた。ただし、必ずしも想定通りの研究結果が得られているわけではない。具体的には、日英語の異同に関する研究は、先行研究が多いため、網羅的に把握することが困難であること、および新たな発見を研究論文という形式で公表することが困難であると考えている。 その一方で、国語教育と英語教育における異文化交流像や価値観の異同、学習者の属性(性・母語)による言語学習への影響については、少しずつ明らかとなりつつある。 日本語・国語・英語の教育の連携を考察する上で、言語的な側面については先行研究を中心とした研究にならざるを得ないと考えている一方で、各言語教育が抱ええている画一的な学習者像という問題点は、次第に明らかとなってきていると言えよう。 今後は、この問題点をより解明しつつ、問題点を克服するための言語教育観の構築およびそれの実現に向けた教員養成の在り方の考察を継続して取り組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
日本語と英語の構造上およびその背後にある思考の異同について体系的な整理を目指したい。同時に、学習者の属性によって異なる言語学習上の相違点を明らかにしたい。これらにより、学習者が言語を習得する上で妨げとなっている画一的な言語学習者像という幻想を打破し、彼らの言語学習を促進し得る要因について明らかにできればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進み具合から、共同発表を予定していた学会に間に合わず、その分の費用がかからなかったため。
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