今年度は主に、昨年度までに行った伝統的な歌唱の学習についての分析及び考察をもとに、子供の歌唱の特徴を踏まえた実践を計画し、小学校で検証のための授業を行った。 具体的には、富山県民謡「こきりこ」および北海道民謡「ソーラン節」について、子供が歌唱している範唱の音源や図形楽譜など、これまでに開発した教材を用いて、小学校2校4クラスにおいて指導実践を試行した。それらの実践では、子供が歌唱している範唱を用いたことにより、子供にとって声の用い方や唄い方をつかみやすく、模唱しやすくなることが示唆された。また唄う際の音域についても、民謡らしい声で唄う上で適切な高さで、無理なく歌唱することが概ねできており、子供の範唱を用いる効果を確認することができた。 加えて、民謡の稽古や学校での指導を行っている2名の実演家・指導者にインタビューを実施し、子供の唄い方の特徴や、子供を指導する際に配慮している点などについて情報収集を行った。そこでは、子供が民謡をはじめて歌唱する場合、まずは旋律の大まかな動きを捉えて唄えるようにすることを目指し、その上でコブシなどの細部についても、子供が自分なりに試行錯誤しながら範唱に近付けるようにする、という指導の段階について示唆を得ることができた。 この他に、長唄「勧進帳」を子供が唄う音源の収録を行ったり、民謡「こきりこ」を歌唱する子供の様子について実地にて調査を実施したりすることができたが、これらについては、今後、引き続きデータの整理や分析、まとめ等が必要になると考えている。
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