研究課題/領域番号 |
17K04857
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教師の熟練性 / ライフヒストリー的研究 / 目標構造の多層化 / つまずき / 授業の構想、運営 |
研究実績の概要 |
熟練教師の「熟練性」を目標構造の多層化の観点から理解するために、まずは、初任期教師の授業の課題を明らかにするところから着手した。4つの事例を分析した結果、初任期教師の授業の共通の課題として、3つの課題を析出した。第1に、授業の構想、展開力不足である。断片的な活動はそれぞれに存在するが、それが一つの筋になっていないことである。第2に、授業の目標が達成できない、いわゆる脱落した子どもへの対応が十分にできていないことである。その子のつまずきを指導できないことだけではなく、「つまずき」を全体に還元して指導するということができない。この課題は初任期教師には難問である。第3に、めあてやふりかえり、ペアやグループ活動の形式が先行し、内容的な実質が伴っていないことである。この成果は「初任期教師の授業実践指導力の課題と課題克服のための支援ツール(ルーブリック)の開発」『三重大学教育学部紀要 第69巻』2018、pp.531-539 にまとめられた。 初任期教師の授業の課題は、経験不足からくる指導力不足ともとらえられるが、目標構造の単層性からも説明可能である。一時間の授業目標の達成をどのように実現できるか、という観点からの授業構想や運営が行われ、授業の本来の目標である「個々の子どもの能力の育成」という観点からのアプローチができていない状況とも解釈できる。目標構造が単層構造になっており、個々の子どもへの働きかけが可能となる目標層が形成されていないため、子どもの状況を理解できなかったり、それを重要視できない、ということになってしまうのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初任期教師の授業実践事例をいくつか収拾でき、その中で4つの事例を分析し共通の課題を導きだせたこと、またそれを論文化し、学部紀要に載せることができたことである。また熟練教師や中堅教師の事例も数は少ないが、蓄積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
初任期教師の事例研究をもとに、そこで共通に見いだされた課題が他の初任期教師の事例にもあてはまるかどうか検証を重ねていく。 また、今後は中堅教師、熟練教師の授業実践事例の収集、および目標構造の多層化という観点からの授業分析、さらにはライフヒストリーインタビューによる目標構造の多層化の契機の抽出と経緯の言語化にも取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際教養大学(秋田市)への出張が日程調整のために計画を変更せざるを得なかったことが主な原因である。今年度、国際教養大学での授業観察等を行いたい。
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