研究課題/領域番号 |
17K04859
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
田中 宏子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00324559)
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研究分担者 |
榎本 ヒカル 相模女子大学, 栄養科学部, 教授 (00423517)
亀崎 美苗 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00531336)
正岡 さち 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (30194161)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教材開発 / 家庭科 / 住生活 / ICT活用 |
研究実績の概要 |
本研究は、家庭科住生活学習をより発展拡充させるための一試みとして、ICTを含んだ新たな教材の開発を目指す。中学校家庭分野住生活の指導における現状と課題及びICT 活用に関する質問紙調査の結果を踏まえ、アクティブ・ラーニングをより一層充実させた授業で用いる教師用補助教材を作成する。 2017年度に実施した公立中学校家庭科担当教員を対象とした中学校家庭科の住生活学習におけるICT活用の現状に関する調査の結果、教師が求めるICT 教材として、住生活学習の各内容を関連付けた多岐にわたる要望が寄せられた。このことより、使用頻度の高いパソコンや電子黒板を活用した使いやすいICT 教材の開発により、住生活学習の内容を充実させうる可能性が示唆された。求められる教材として最も多く挙げられたのは、パソコン上で間取り構成が行え、立体的に示せるもの、また、それらの家具配置やインテリア(色彩・照明含む)の変更が可能であるものであり、次いで、地震時の揺れや家具の転倒などをシミュレーションできるソフトであった。 そこで、中学校家庭科「住居の機能と安全な住まい方」において、「家族の生活と住空間との関わり」学習と「自然災害に備えた住空間の整え方」学習をつなげてストーリー性をもたせ、住空間の構想を充実させた教材の作成を試みた。指導計画、学習指導案、ワークシート、教育効果が高まるように仕組んだ写真などの視聴覚教材、住空間の構想を考え工夫するツールとしての間取り図、その3Dシミュレーションや住宅模型、それらの動画、VR教材を作成した。 一方、小学校家庭科住生活「寒い季節の住まい方の工夫 -結露と換気-」学習におけるの教師用指導書と授業キットを含む教材を完成させた。続いて「暑い季節の住まい方の工夫」学習、「音と生活との関わり」学習における実験道具等を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、2017年度に実施した公立中学校家庭科担当教員を対象とした住生活学習におけるICT活用の現状に関する質問紙調査の結果を、日本家政学会大会(2018年5月)にて1報、日本建築学会大会(2018年9月)にて2報を報告した。現在、投稿論文を作成中である。 ICT活用の現状に関する質問紙調査より得られた知見を踏まえ、中学校家庭科「住居の機能と安全な住まい方」において、住空間の構想を充実させた教材を作成した。申請時での計画は、作成した教材をもとに、VRを用いた場合とPCによる3Dシミュレーションを用いた場合の空間評価や教育効果の比較を行う予定でいた。しかしこれに関しては、次年度に持ち越された。その理由は、共同研究者と研究会を行う中で、申請時の研究計画を若干変更せざるを得ないとしても、ICTの進歩、現場の状況に合わせて、指導用補助教材の開発を行う必要があることに意見が一致したためである。そこで、まず、中学校家庭科教員を対象として住生活学習におけるICT活用の現状に関する質問紙調査を行い、その結果を踏まえて、教材作成に着手したため、進捗状況に若干の遅れが生じた。 一方、研究が当初計画通りに進まない時の対応として、小学校での教材開発を行うこととしていた。そこで、小学校家庭科住生活の学習の中から、「寒い季節の住まい方の工夫」、「暑い季節の住まい方の工夫」、「音と生活との関わり」における教材作成を行った。そのうち「寒い季節の住まい方の工夫-結露と換気-」学習において教師用指導書と授業キットを含む教材を完成させた。その結果は、日本家政学会関西支部第40回(通算96回)研究発表会(2018年11月)、滋賀大学教育実践研究論集(2019年3月)にて報告した。 従って、現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
中学校家庭科の授業は題材ごとに指導する場合が多い中、本研究は、生活を総合的に捉えられるよう「住居の機能と安全な住まい方」で学ぶ全ての題材をつなげてストーリー性をもたせ、住空間の構想を充実させた教材を作成することを目的としている。 2019年度は、2018年度に作成した教材を用いて、教育学部の学生を対象として模擬授業を行い、改善し、授業の目標に応じた関連教材を授業ごとにセットする。それらを用いて中学校家庭科教員により授業を実施し、教材の妥当性の検討を行う。一連の検討結果を反映させ、授業で実践的に用いる教師用指導書と授業キットを含む教材を完成させる。これらの結果は関連学会にて報告する。 一方、住空間の構想を考え工夫するツールとしての間取り図、住空間をより想像しやすくするための3Dシミュレーションや住宅模型、それらの動画、VR教材は既に作成している。そこで、それらを用いて、空間評価及び教育効果の比較実験を行い、各指導事項の目標を達成するにはどのような教材を使用するとよいのか、また、これからの住生活教材の開発にむけての方向性を検討する。これら空間評価及び教育効果の比較実験の結果については、関連学会にて報告し、学術論文としてまとめ、学会および専門誌に投稿する。 また、これまで行ってきた小学校家庭科住生活「暑い季節の住まい方の工夫」学習と「音と生活との関わり」学習における教材作成についても、小学校での授業実践を行う予定であり、授業分析の結果を反映させ、改良を加えて教材を開発する。最終的には学習指導要領で示される子供たちが身につけるべき資質・能力が身に付いているかを確認し、教師用指導書と授業キットを含む教材を完成させる。その結果は学会等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度、研究会を行う中で、申請時の研究計画を変更せざるを得ないとしても、ICTの進歩、現場の状況に合わせて指導用補助教材の開発を行う必要があるとし、中学校家庭科教員を対象としたICT活用の現状に関する質問紙調査を実施した。その分析結果に基づいて教材作成を行ったため、教材開発のスケジュールが遅れた。そのため、この遅れが影響し、VRを用いた場合とPCによる3Dシミュレーションを用いた場合の空間評価及び教育効果の比較実験が次年度に持ち越された。従って、主としてこの実験にかかる費用等が持ち越されたことが、次年度使用額が生じた理由である。 次年度の研究費の使用計画は、島根大学附属での授業実践にかかる旅費(島根2泊3日 関東より2名、関西より1名)250千円、空間評価及び教育効果の比較実験費130千円、資料整理等の謝金100千円、最終授業実施・評価のための調査費30千円、コンピュータ関連消耗品79千円、論文投稿費50千円、総額639千円である。
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