研究課題/領域番号 |
17K04860
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
岡田 敏之 京都教育大学, 教育学部, 教授 (50791331)
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研究分担者 |
野山 広 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40392542)
岩槻 知也 京都女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60263191)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 夜間中学 / 不登校 / 学習権 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで既存の夜間中学が取り組んできた実践における教育効果を検証し、いじめや不登校等の現代における教育問題に切り込むことを通して、夜間中学の存在意義を明らかにすることにある。またそれにより、2016年12月14日に交付された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)のもと、文部科学省の「各都道府県に少なくとも1校開校することを促進する」方針の後押しを行い、各地方自治体に対し、公立夜間中学校及び不登校特例校の増設を促すことにある。2017年度は、主として以下の2つについて研究を進めた。 第1に、研究代表者の前任校である洛友中学校における教育実践の検証である。当校は、不登校を経験したがそれを克服しようとする昼間部の生徒と、様々な理由により学齢期に義務教育を果たすことができなかった夜間部(二部学級)の生徒が、世代や国籍を超えてふれあい学び合う全国唯一の学校である。校長として実践してきた事柄を、生涯学習について社会教育学の視点から、不登校について生徒指導の視点からそれぞれ考察・理論化を行い、一部の地方自治体に発信することができた。 第2に、研究代表者を含む研究チーム及び実践チームとして、研究分担者、連携研究者及び研究協力者の、不登校特例校や公立夜間中学校、自主夜間中学へのフィールドワークによる教育実践や教育課程の調査である。多くの関係者の協力により、とりわけ自主夜間中学の資料が数多く集まった。また、公立夜間中学校開設に向けたニーズ調査研究については、文部科学省の委託を受けた業者への助言を行い、今後の各自治体が行うニーズ調査のための大いなる参考になるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の前任校である洛友中学校における教育実践を考察・理論化し、千葉県松戸市における「夜間中学講演会」(一般市民向け)や高知県「公立中学校夜間学級設置検討委員会」での発表に活かすことができた。松戸市は2019年度の開設を予定、高知県も近々の開設に向けて具体的な動きになっている。また、今後夜間中学校への不登校生徒や不登校経験者の入学が多く見込まれることから、「中学校やフリースクール等から夜間学級への円滑な接続について」と題する教職員研修を墨田区立文花中学校において行えた。 フィールドワークについては、関係者の協力のもと、特に自主夜間中学の資料を数多く集めることができた。また、ビデオ資料については、プライバシーの関係上、収集が困難ではあるが、数本収集することができた。ただし、不登校特例校への視察ができていないことが残念である。 上記のような状況から総合的に見れば、課題は残るが、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
各自治体に対して、公立夜間中学校の開設促進を図るため、また地元住民に理解を得るためには、夜間中学の具体的な取組はもちろん、夜間中学生徒と一般中学生徒との交流における教育効果などを伝えていくことが重要である。伝える手段としては、ビデオ資料は視覚的にもわかりやすく印象的であるため、今後もプライバシーに最大限配慮しながら、積極的に収集していきたい。 また、公立夜間中学校新設のボトルネックとも言えるニーズ調査についても、文部科学省の委託調査研究の結果を踏まえ、各自治体に助言を行っていく。 さらに、今後の夜間中学の在り方を考え、不登校特例校への視察や日本語教育についての研究も取り入れていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:予定より旅費が安くできたため。 使用計画:ビデオ編集ソフト、映像機器の購入及び旅費に使用する予定。
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