研究課題/領域番号 |
17K04869
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
鈴木 正行 香川大学, 教育学部, 教授 (90758856)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会進化論 / 経済倫理 / グロ-バルコミュニケーション / 教科横断的学習 / 多文化共生 / 多民族化 |
研究実績の概要 |
日本人の社会観や職業倫理観の形成について,近代日本における社会進化論の受容と報徳運動の展開に着目し,静岡県西部地域の農村社会を対象として調査を行った。とくに明治10年代から30年代にかけて,優勝劣敗の論理が西洋技術の導入と結び付きながら近代日本人の意識の中に深く浸透していく過程を,先進的な耕地整理事業を推進した老農の思想と行動に焦点を当てることにより明らかにした。 また,多文化共生社会の実現に重要な英語によるコミュニケーション力の必要性を学習者が認識できるようにすることをめざし,現代社会の課題である熱帯雨林の破壊と自然保護の取り組みについて学習者に考えさせる,中学校社会科・英語科の単元を開発し,授業実践を行った。パームプランテーションの拡大によるボルネオ島の森林破壊とオランウータン等の保護活動を題材として,社会科・英語科のコラボレーションによる教科横断的な学習とした。これは,グローバルな現代社会の課題の解決に取り組む人々が,英語によるコミュニケーションによって活動を行っていることを学習者に意識させるためである。その際,学習者が自分にできることを考え議論できるよう,対応策の選択肢を英文で表したダイヤモンドランキングを用いて参加型学習を行った。その成果と課題については,日本教科内容学会第7回研究大会(山梨大学web開催)で報告するとともに,論文(鈴木正行・佐藤梨香・三野孝一郎「SDGsの視点による社会科・英語科の協働的授業開発―ボルネオ島の森林開発と自然保護を題材として―」『香川大学教育実践総合研究』第42号,2021年3月)としてまとめた。このほか,日本社会科教育学会第70回全国研究大会において,「多民族化進行社会における生活・労働の在り方と共生観の育成に関する単元開発―生活倫理・職業倫理に関する意識調査をもとに―」をテーマとして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに現代日本の職業倫理,外国人労働者や外国籍生徒の意識などに関する情報を得るために,倫理法人会,中小企業経営者,公共職業安定所,浜松市立高等学校インターナショナルクラス等で聞き取り調査を行ってきた。また,研究成果の一部をもとに,中学校社会科公民的分野の学習指導要領大項目「A私たちと現代社会」中項目「(1)私たちが生きる現代社会と文化の特色」において,少子高齢化,情報化,グローバル化,文化の継承と創造,持続可能な社会等に関する単元及び学習指導案例の開発を行った(日本公民教育学会『新版テキストブック公民教育』第一学習社,2019年12月)。 しかし,コロナウイルスの感染拡大によって,各種機関や企業等での聞き取り調査や授業実践による検証が困難になっているため,調査・研究が滞っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行ってきた聞き取り調査や,教育関係者及び大学生へのアンケート調査(職業観,多文化共生観等)で得られた成果をまとめる。加えて,内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成30年度)を用いて,若者の職業観・倫理観について分析する。その上で,多文化・多民族化の進行化における職業倫理・生活倫理の形成に資する単元開発を行い,研究成果を報告書にまとめて刊行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大によって移動制限がなされ,関係する学会がweb開催になったこと,関係諸機関・企業・個人・学校等での聞き取り調査が困難になったこと,開発単元の学校での授業実践による検証が難しくなったことなどにより,出張旅費の使用が当初の予算から大幅に減った。また,調査・研究が滞ったことにより,計画していた報告書の作成・刊行ができなくなった。これらの理由により,次年度使用額が生じた。
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