コロナ禍による移動制限や学校現場での授業実践が困難になり,当初の計画の変更を余儀なくされる中で,(ア)大学生の生活・職業倫理,職業観などに関する調査,(イ)内閣府「平成30年我が国と諸外国の若者意識に関する調査」による若者の国際性や自国意識などに関する分析,(ウ中学校社会科公民的分野の単元開発「グローバル化と日本社会の課題」,(エ)SDGsの視点による中学校社会科と英語科の教科横断的授業開発,(オ)外国人を含む災害弱者を守る小学校社会科防災学習の授業分析,(カ)静岡県西部地域における報徳思想と社会進化論の展開に関する歴史学的調査,などを行った。 (ア)・(イ)より,①日本の若者は諸外国の若者に比べて国際交流の経験が大幅に少なく,内向きの傾向が強いこと,②日本の若者の約3分の1が日本人を勤勉・まじめだと思っているものの,約3分の2の若者はそのように思っておらず,マスコミ等で喧伝されるほどに自国民を勤勉とは思っていないこと,③大学生たちは,小学生の頃から少子高齢化の進む日本の状況について学んでいるため,労働力確保の必要性を認識しているが,同時にリストラや非正規労働者の増加などによる日本の雇用状況の先行きにも不安をもっており,外国人労働者の流入が自分たちの雇用を奪うのではないかという疑念もいだいていること,④外国人と接する機会が増えていく中で,多くの若者が自国民の実態を冷静に見ており,仕事上の同僚の国籍をそれほど気にしていないこと,などが明らかになった。若者の意識を概観すると,日本の社会を治安が良くて安心・安全な社会であるとし,外の危険な世界にできるだけ出ないようにしていたいという意識が表れていた。国際交流への興味・関心・意欲はあるものの,国際交流活動を行うにしても,常に日本を基点とし,海外と行き来しながら活動し,不安があればすぐに日本に帰りたいという意識が垣間見られた。
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