本研究は現職教員と教員志望学生を対象とした解決志向アプローチ(Solution-Focused Approach: SFA)に関する研修プログラムを開発し、その効果を検証することを目的とする。SFAとは人々のもつリソースや強みを活かすアプローチである。生徒指導・教育相談は、児童生徒の問題行動への事後的対応に目が向けられがちであるが、本来は児童生徒が自ら課題を解決する力を積極的に開発することを目指すものである。しかし、この理念を具現化するための方法は未だ試行錯誤の状態にある。こうした現状に対して、SFAの観点から教員研修プログラムを開発することで、生徒指導・教育相談の本来の理念を実現する教員の教育観の変容をも見据えた新たな教員研修のあり方に対して、理論的・実践的・実証的な根拠をもとにした提言をはかる。 令和元年度には、これまでの研究の成果を踏まえて、現職教員を対象とした研修会を複数回にわたって実施した。 また、大学の教職課程において、その成果を活かした実践的授業を展開した。 さらに、学校の生徒指導・教育相談の充実において協力が期待される心理職に対してSFAを学ぶ機会を提供し、学校におけるSFAの活用に関して検討を深めた。 一連の実践・研究においては、「解決志向」を狭義には捉えず、児童生徒が自ら課題を解決する力を積極的に開発することを目指す取り組み(クラス会議、構成的グループエンカウンター、ソーシャルスキルトレーニング、認知行動療法、ポジティブ行動支援、チーム援助等)の知見を活かした実践・研究を進めた。
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