研究課題/領域番号 |
17K04876
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
澁谷 久 関西学院大学, 教職教育研究センター, 教授 (90780461)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数学的教具・学習具 / 現物実験 / 特性 / 発達段階 / 開発 |
研究実績の概要 |
ここまでの研究の成果,及び,小学校,中学校,高等学校における個人による現物実験の意義を踏まえ,派生した実践にかかわる「数学の視覚的及び触覚的体験の場設定に関する実践的研究―「マス・フェア」と「移動式数学博物館」の取り組みを通して―」(関西学院大学教職教育研究センター紀要『教職教育研究』第26号,令和3年3月)を発表した。また,さらに複数の数学的学習具の開発,予備トライアウトを行うことができた。特に,幼稚園対象の「坂道ころりん」,小学校対象の「回る比例のグラフ」,中学校対象の「傾きリーダー」,高等学校対象の「微分係数読み取り器」は,発達段階に応じた学習具の特性を基にした「グラフの傾き」についての縦断的な学習具の開発により,学習者の発達段階に応じた学習具の特性とその系統性が実験の効果を高めることを明確にすることができた。 これらは昨年度まとめた幼児・児童・生徒の発達段階に応じた現物実験の意義,それに伴う学習具の特性を示すマトリックスを基にしている。考察対象を小学校,中学校,高等学校に加え幼稚園・保育所・幼保連携認定こども園にしたことにより,数学教育における実験を有効にするための学習具の特性が発達段階により変わること,そこに系統性があるという仮説を検証できたと考える。 さらに,本研究の成果の形の1つである数学的学習具集(全員が観て触れて動かして学ぶ)の作成作業も進めている。これは,調査等の協力者,関係教育機関に提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症の影響で学校現場に出向くことができず,当初予定していた最終の実証実験を行うことはできなかったが,研究の成果をまとめられる状況にある。すなわち,単一の学校種に焦点を当てるのではなく,小学校,中学校,高等学校における個人による現物実験の意義,それに伴う学習者の発達段階に応じた学習具の特性とその系統性を明確にし,それが実験の効果を高めることを示すことである。 2019年度に,幼児教育における数量や図形の学びでの道具の効果の大きさがわかり,発達段階に応じた系統性の観点により,幼児教育も対象に含める必要が生じたことから,その部分を重点に学習具の開発を行った。過去の研究業績が少ないものであり,文献等の閲覧に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に示した「グラフの傾き」を内容とする数学的学習具にかかわる実証実験を予定しているが,コロナウイルス感染症の状況を踏まえ,秋以降になると予想される。状況により依頼,データ採取のみの準備もしておく。 本研究の成果の形の1つである数学的学習具集を完成させ,調査等の協力者,関係教育機関に提供する。その成果物を通して,有効な学習具の開発が積極的に行われ,個人による現物実験を中心に据えた,学習者全員が参加できる授業が効果的に取り入れられることを促進できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症により,実証実験・発表等にかかわる旅費,それに伴い成果物の作成費用やその郵送費にかかわる経費を使用していないため,未使用額が生じた。 成果物としての数学的学習具集の作成費用,及び,その郵送費で多くを使用することになる。また,研究のまとめにかかわる実証実験及び研究発表の旅費としても使用する計画である。
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